奇跡とは、予期できないもの

 その新聞社は、試合での活躍を耳にして、僕の記事を書きたいというのです。

 それから一両日中、記者がわが家を訪れ、僕や家族、さらには僕の先生やコーチにも取材しに行きました。それは、最近までずっと馬鹿にされ、のけ者にされていると考えていた子にとって、素晴らしい出来事でした。

【第4回】<br />もし奇跡が起こったら、<br />それを起こしたのは自分であり、<br />奇跡を起こす力は、自分自身にある10歳の頃、教室で。(タイムズ・ピカユーン紙提供)

 その記事が新聞に出ると、さらに多くのチャンスがめぐってきたのです。

 僕は、イースターパレードの「王様」役を頼まれました。

 白いタキシードを着て王冠をかぶり、パレードの先頭の台車に作られた王座に座って、歩道にあふれるたくさんの人に手を振りました。

 その時、ほんの2、3年前、みんなから無視され、まったく自信をなくしていた日々のことを思い出していたのです。でも今は、まったく見知らぬ人が、僕に拍手喝采を送ってくれています。

 僕に、積極的に生きる力を与えてくれたのは家族でした。

 僕がこのようなパレードに参加できたのは、両親がどんな時も自分のそばにいてくれたおかげです。彼らは、決してあきらめないことを教えてくれ、その教訓を僕はしっかりと自分のものにしたのです。

 ほどなく、僕は、ジェファーソン郡保安官オフィスの名誉警察官に任命されました。世の中とはまったく、予想がつかないものです!

 ジェファーソン郡でいちばん偉いハリー・リー保安官に、謝肉祭の最終日に行われるパレードへの参加を頼まれたのです。

 僕は警察官の制服を着て、リー保安官の隣に座りました!

 奇跡の多くはあまり目立たず、まったく予想もしないときに起こります。

 それは、降ってわいたようにやってきました。

 ある日、体育の授業のあとでベンチに座っていた時、靴ひものほどけたスニーカーをじっと見ている自分に気づきました。

 僕は5歳の時、自分で靴ひもを結ぶことを誓ったのです。でも、あれから何年もたち、思春期に至ってもまだ、結べずにいたのです。

 その日、ベンチに一人座っていた僕に、最大の奇跡が起こりました。

 左足の靴ひもで、蝶結びをつくることができたのです。

 それは、完璧とはほど遠い形でしたが、蝶結びに違いありませんでした。

 それから、右足でも同じことをしました。ただ、やってみたのです。

 ファンファーレも、拍手喝采もありませんでした。でも、その瞬間、自分の中を駆け巡ったのは、それ以上にものすごく大きなものでした。

 目の前には、しっかりと蝶結びされた左右の靴が一足、並んでいました。

 僕は、その靴ひもを自分で結んだのです。

 それこそ、僕が自分で起こした奇跡でした。

 これにより僕は、もっと大きなものに挑戦する心の準備ができたのです。
 

*この連載は、3/5~3/9まで、5日連続で更新します。


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