ただ銭と異なり、楊が今回の“両会”で国務院副総理に就任することはなかった。代わりに、王毅(元駐日大使、国務院台湾事務弁公室主任)が外相に留任し、兼任する形で国務委員に就任した。外交のプロフェッショナルとしては、楊が党のトップ、王が政府のトップという局面になったわけであるが、王毅がこれまで以上に外交に特化した首長として習近平が主張する“大国としての外交”を引っ張っていくことは間違いない。

 政治的地位の昇格を得た王毅はこれまで以上に自信をみなぎらせ、前のめりになって外交の舞台で自らの役割を演じようとするであろう。

 筆者が注目するのは楊潔チの役割である。「楊潔チには外交と一定の距離を置かせる」(共産党対外関係担当幹部)という見方も存在する。

 とはいえ、楊潔チによほどの政治的・能力的・人格的問題がない限り、上記のように対米関係がこれだけ緊迫している状況下において、対米外交に最も長期的かつ直接的に携わってきた“現役”である楊潔チが外交、特に対米関係マネジメントに関わらないというのはなかなか考えにくい。王毅との役割分担という意味で一定の齟齬や矛盾が存在するのだろうが、楊潔チの今後の動向にも注目していきたい。

“ポスト習近平”の呼び声も高かった
胡春華の去就は

 最後に触れておきたいのが胡春華である。北京大卒、共青団出身の政治エリートであり、長年勤務したチベット自治区では共青団の先輩である胡錦濤前総書記と4年間(1988~92年)時空を共有している。

 今年55歳の若さにしてチベット自治区党副書記、河北省党副書記兼省長、内モンゴル自治区書記、広東省書記を歴任している。一時は“ポスト習近平”の呼び声も高かった胡であるが、昨秋の党大会での政治局常務委員入りはならなかった。