行政サービスの99%が年中無休で利用できる

 現在、公的サービスの99%が電子化され、24時間年中無休で利用できます。そのため、行政の窓口が要りません。住民票の変更はパソコンやスマートフォンからアクセスして済ませます。面倒な確定申告についても、数分から15分程度で終わる。1年間の全取引が電子化されているから、その確認をしていくだけで済むのです。

 投票についてもオンラインで、世界中のどこからでも簡単にできてしまい、内閣の議事録も公開されています。交通違反をしても、その場で罰金をスマホで支払うといった具合で、レストランもお店も電子化されているので現金の要らない社会が実現されています。

 つまり、病院も警察も学校も税金も全てがIDで一つにつながっているのです。それを可能にしたのが「X-road(エックスロード)」という技術です。異なる機関同士のデータを安全にかつスムーズにやりとりできるよう、基盤システムを構築したのです。

 もともとエストニアは、91年に独立を回復するまで、旧ソ連の支配下にありました。そのため、60年代からサイバーセキュリティー研究所があり、暗号技術に関する高い知見を持つ人材がそろっていました。

 独立後は、ソ連から来た上層部がごっそりと帰国したため、行政をつくり直さなければならなくなりました。それを機に、電子国家をつくり上げていったのです。

 電子化の背景には、今もなお隣国ロシアの脅威があると聞きます。国民には「国土がロシアに占領されるかもしれない」という危機感があり、万が一、国土を失っても「国民も国家もオンライン上にある」という世界を本気でつくろうとしているのです。

 さらに「e-Residency(イーレジデンシー=電子居住)」という取り組みも進めています。エストニアに行ったことがない人でも、約100ユーロ(約1万3000円)を支払い、顔写真や指紋の登録などを行うと、審査の後にエストニアの電子居住者になれるという制度です。

 電子居住者になれば、エストニアで会社設立や銀行口座の開設ができるようになります。エストニアで会社を設立すれば、EU内で事業を行えるようにもなるのです。

 昨夏には日本との租税条約が署名され、税制も整いつつあります。ホームページによれば、今年3月現在で154カ国から3万3000件を超える応募があり、この制度を利用して5000社を超える会社が生まれているそうです。