今年の参加メンバーは、伊藤祐介(27歳)、田中正義(23歳)、笠谷俊介(21歳)、斎藤誠哉(21歳)の4名。いずれも、「和田さんと自主トレをしたい」と言ってくれた、ホークスの後輩投手たちだ。自分一人だと、どうしても妥協してしまいそうになることもあるので、彼ら若手とともに練習に励む機会は、僕にとってもとても貴重だ。
10歳以上も年齢の離れた彼らとの関係性を、ひと言で言い表すのは意外と難しい。僕らプロ野球選手は、同じチームメートであっても、基本的にはいわゆる「個人事業主」なので、企業で働くビジネスマンの方たちの上司・部下関係とは少し違う。
彼らにアドバイスをする機会がないわけではないが、だからといって師弟関係があるわけでもない。あえて適当な言葉を探せば、「先生と生徒」というのがいちばんしっくりくるような気もするが、学校の先生のように一方的に勉強を教えるスタイルをとるわけではないし、僕自身が彼らから教えられることも多い。
このような独特の関係性のなかでの話なので、読者の皆さんに直接役立てていただけるようなヒントにはならないかもしれないが、今回はこうした集団での「練習」において、年長者としての僕が注意していることをお伝えしていきたいと思う。
プロだからこそ、自分からはアドバイスしない
まず僕が気をつけているのが、「自分から進んでアドバイスしない」ということだ。基本的に僕は、後輩から質問されたことにしか答えないようにしている。「フォームのこの部分を改良すれば、もっとよくなるかもしれないな……」と内心思っていても、僕のほうから彼らに助言することはない。
なぜなのか? 理由は3つある。
1つは、あまりにも当たり前すぎて拍子抜けされるかもしれないが、本人が自発的に「知りたい」「学びたい」と思ったことでなければ、いくらこちらが熱心に教えてもあまり意味がないと僕が考えているからだ。僕たちはプロの選手であり、アマチュアではない。個々人が自ら「もっとうまくなりたい!」と思わなければ成長はない。
今年の自主トレのメンバーも、決して僕のほうから「一緒にトレーニングをやろう!」と誘ったわけではない。向こうから自発的に「和田さんのトレーニングに参加したい!」と言ってきたピッチャーが、今年はたまたま前述の4人だったというだけの話なのだ。
2つ目の理由は、「彼らが積み上げてきた野球」を尊重したいからだ。たとえどんなに年齢が離れていようと、僕たちはそれぞれ、アマチュア時代にあげた一定の実績を評価されて、この世界に入ってきた「プロ」である。そのことに対するリスペクトは忘れてはならないと僕は考えている。