さらに高裁に控訴して半年はかかると仮定します。再び敗訴となればAに支払う給料は30万円×6ヵ月×2=360万円となり、約2年間で1350万円もの給料を無駄に支払うことになるでしょう。最高裁に上告すれば、当然のことながら支払う給料はさらに多くなります。

 しかも最悪なのが、これだけの金額を払っても解雇が認められないという事実です。裁判で会社が負ければ解雇を撤回しなくてはならず、Aは職場に戻ってくるのです。どうしても辞めてもらいたい場合には、さらに退職金を上積みしなくてはなりません。結局、Aを解雇するために1500~2000万円くらいかかる計算になります。もしもこれが整理解雇で、Aのように仮処分を申し立てる労働者が4、5人いたとしたら、倒産してしまう会社もあるでしょう。

 もちろん、控訴や上告をするときには、担保を供託して強制執行を執行停止することもできますが、敗訴金額の7割から9割の現金を供託する必要があるので、この事例でいくと理論上は1000万円近くの費用がかかることを念頭におくべきです。

正社員の解雇には2千万円かかる!