退職勧奨に関する規制がゆるいことを上手に利用したリストラの手法もあります。典型的なのが「ロックアウト型退職勧奨」です。ロックアウト型退職勧奨は外資系企業で多く用いられる方法で、リーマンショック後によく行なわれました。この方法について争われた裁判例は、私の知る限りまだありませんが、どのようなものか参考までに紹介します。
「ロックアウト型退職勧奨」とは?
まず、会社は退職勧奨をします。労働者がそれを拒否したとします。その労働者に会社は自宅待機を命じ、賃金も100%払うのです。同時に、たとえば、1ヵ月以内に退職すれば退職金を上積みするけれども、1ヵ月を過ぎて2ヵ月以内なら上積み分は50%に減額するなど、退職勧奨に応じた場合の条件を提示します。
自宅待機を命じられた労働者は、周囲から冷たい目を向けられることで精神的に追いつめられていきます。また、時間をかければかけるほど退職条件は厳しくなります。そして遂にその状況に耐えられなくなって、辞表を提出するのです。
日本の場合、賃金さえ支払えば労働者に仕事をさせなくてもかまいません。賃金さえ払っていれば、労働者が仕事をする権利を主張しても、裁判所はそれを認めないのです。
外資系企業にも、もちろん言い分があります。外資系企業は、このような方法をとる理由について、退職勧奨を受けた労働者がセキュリティ上の問題(たとえば情報漏洩、システム破壊)を起こした場合は取り返しがつかなくなるので、人事管理上、退職勧奨を受けた労働者がオフィスに立ち入らないようにしていると述べています。