金委員長が拉致問題で動いたら、朝鮮中央放送が「将軍様が寛大な心で、被害者の帰国を認めた」と大々的に放送し、中国、韓国、ロシアがそれを褒め称える。そうなると、日本は北朝鮮に対する批判を弱めざるを得なくなるかもしれない。

 そして、トランプ大統領から「シンゾー、拉致問題に最善を尽くしたぞ。被害者が帰国できてよかったな」と声を掛けられたら、安倍首相は、謝意を示さざるを得ない。そもそも支持率低下に悩む首相は、「大きな成果、で、あります」と甲高い声で、アピールするしかない。

 日米首脳会談の開催前に、次期米国務長官に指名されているマイク・ポンペオCIA長官が大統領特使として北朝鮮を極秘訪問し、金委員長と会談していたことを、トランプ大統領がツイッターで明らかにした。大統領は、「ポンペオ氏と金委員長による会談は非常にスムーズで良い関係を構築することができた」と発信しており、米朝首脳会談に向けて、具体的な協議事項を調整したとみられている。

 金委員長は、ポンペオ長官に対して、北朝鮮で拘束されている米国人3人を、米朝首脳会談に合わせて解放することが可能だと伝えているという。日本の拉致問題についても、北朝鮮がなんらかの打診をしてきてもおかしくはない。

 日米首脳会談で、トランプ大統領が「拉致問題の解決に最善を尽くす」と強いメッセージを出したのは、単なる「マッチョなパフォーマンス」ではないかもしれない。米朝首脳会談で、拉致問題をどう取り扱うか、米朝間で既に調整が始められ、手応えを感じていることを示唆しているのかもしれないのだ。

 だが、それは「北朝鮮核開発問題」で、日本の望む「完全な非核化の実現」とは程遠い解決との引き換えだろう。「拉致問題」もほんの数歩前進するだけだが、国際社会では「完全に解決した」ということになるかもしれない。日本にとっては、最悪な結末を覚悟せねばならないかもしれない。

「アメリカファーストのジレンマ」によって
「世界の暴力団」米国が紛争地域で「モグラ叩き」の危険性

 最後に、米英仏連合軍によるシリアの化学兵器関連基地へのピンポイント的なミサイル攻撃から、トランプ政権の「米国第一主義(アメリカファースト)」の抱えるジレンマを考えてみたい。