2月4日、冠動脈バイパス手術を受け、東大病院に入院されていた天皇陛下が退院された。術後2週間、人工心肺装置を使わない「オフポンプ手術」の標準的な入院期間で、経過は順調のようだ。後はじっくりリハビリに取り組んでいただければと思う。

 冠動脈バイパス手術に限らず「生命」に直結する臓器──心臓にメスを入れる事態は心身に大きな負担を強いる。術前もだが、痛みや社会復帰への期待と不安に翻弄される術後も一筋縄ではいかない。そんなとき、何が支えになるだろうか。

 アメリカ心理学会に興味深いデータが報告されたのは昨年8月。冠動脈バイパス手術を受けた225人を15年にわたって追跡した結果、幸福な家庭生活を送っている既婚者は、未婚者より冠動脈バイパス手術後の生存率が高いという。その差はなんと2.5倍。「未婚」は喫煙や肥満、高血圧などよりはるかに強力なリスクファクターになるのだ。