ロボット再参入なら
「アイボしかない」

 新部門のメンバーの一人だった松井は、すでにこの段階で「ソニーがロボットをやるんだったら、アイボしかないだろう」との思いを持っていた。

 この思いは、経営幹部にも共通だったようで、同年4月に中長期事業開発部門の下に「SR(ソニー・ロボット)事業準備室」として正式発足したころには「アイボのような愛情の対象になるロボットの開発」が目標として一致した。

 同年6月には、当時社長だった平井が経営方針説明会で「ロボット再参入」を表明。その直後の夏には「名前もアイボでいこう」との方針が異論もなく決まっていったという。

「ソニーがロボットに再参入すると宣言して、そこで最初に出す商品がアイボじゃなかったら、皆あれって思うでしょ?」と松井は笑う。「僕らも全く同じで、自然にアイボをやろうよ、ほかにないでしょう? という感じで決まっていきました」。

 松井は90年にソニーに入社後、携帯電話開発に携わったネットワークの専門家だ。先代アイボの開発には関わっていないが、その当時は、ゲーム子会社でプレイステーション(PS)3の開発を担当していた。

 PS3は、ソニー最初の本格的なネットワーク機器でもあるが、新型アイボの頭脳に当たるAI(人工知能)は、本体とともに、ネットワークで常時接続したクラウドにも置かれている。このクラウドAIが先代アイボとの最大の違いだが、松井にとっては「クラウドとネットワーク」は、まさに得意分野だった。

 また、先代アイボとのもう一つ大きな違いは、丸みを帯びたデザイン。この中で腰を振ったり首をかしげたりする愛らしい動作を実現するため、駆動部品が格段に増えた。16年秋に完成した最初の試作品は、部品をたくさん詰め込んだことで「ムキムキのマッチョで全くかわいくないのができた」(松井)という。

 ここから小型化するためには、モーターやギアなどの駆動部品をソニーで内製化しなければならない。実際に駆動部品を試作しては改良するという作業の繰り返しだった。

 苦労したのはハードの小型化だけではない。イヌ型ロボットのソフトウエア開発も難題だった。アイボには、どんなしぐさをインプットすればいいのか正解はなく、「主人の『お座り』の命令をどこまで聞けばいいのか、どうすれば愛情を持ってもらえるのか、そこには苦しんだ」と松井は振り返る。