かの有名な「ハチ公」のエピソードからも分かるように、忠犬として名高い秋田犬。リチャード・ギア主演のハリウッド映画『HACHI 約束の犬』などの影響もあって、海外でも人気が高まっているという。そんな秋田犬だが、他の犬と比べて本当に「忠実な犬種」といえるのだろうか?専門家に聞いてみた。(清談社 松原麻依)
秋田犬ブームが再燃中
「海外で人気」と話題に
大型犬種の中で唯一、国の天然記念物に指定されており、日本を代表する犬種ともいえる“秋田犬”。2012年、動物好きで知られるロシアのプーチン大統領に、東日本大震災後の支援に対するお礼として贈られたのも秋田犬だった。
先日も平昌オリンピック金メダリストのロシアのフィギュアスケーター、アリーナ・ザギトワ選手が「オリンピックで良い成績を獲ったご褒美に」と秋田犬を所望したという。こうしたニュースの影響もあって、最近ではメディアで「外国人に大人気」と紹介されることも増え、注目が集まっているようだ。
秋田犬といえば「忠犬ハチ公」のエピソードがあまりにも有名だが、このイメージもあって秋田犬に「主人に忠実な犬」という印象を抱いている人も多いだろう。実際、純粋犬種の犬籍登録や血統証明書の発行を行っている、ジャパンケネルクラブの公式サイトでも、秋田犬の性格について「性質は沈着、忠実、従順で、感覚鋭敏である」と紹介されている。
とはいえ、犬の忠実さは数値で評価できるものではない。家庭犬インストラクターとして、多くの犬のしつけ・トレーニングを行ってきた宮武佐千子氏は、秋田犬の性格について「防衛心が強い傾向にある」と説明する。
「多くの動物にはもともと“縄張り意識”が備わっていますが、その中でも犬は飼い主やその家族も自分のテリトリーの一員と認識する社会性の高い生き物。とりわけ、秋田犬は自分のテリトリーを守ろうという意識が強いのです」(宮武氏、以下同)
専門家からすると、忠誠心という曖昧な物差しは、その犬種の性質を決定づける要素にはならないという。「忠犬」という表現は、あくまでも一般の人に向けて発信される言葉なのだ。
「秋田犬は防衛心の高さゆえに、見知らぬものを警戒し、飼い主以外にはなつきにくい。そして、テリトリーの一員である家族に害が及ぶと判断すると、必死で防衛しようとします。そうした行動パターンが、一般の人の間で忠犬という見方につながっているのかもしれませんね」