与党と野党による、
2つの法案の違いは?
この2つの法案の違いを、簡単に説明します。
野党4党が提出した「LGBT差別解消法案」は、性的少数者への差別だとみなされる自治体や企業に対して、罰則規定を設けて差別を解消していくことを目指しています。
自民党の特命委員会で検討している「理解増進法」は、人権教育や人権啓発などを通じて性的少数者への理解を深めていくことで、「知らないが故に生まれてしまう差別的な感情」を減らしていくことを目指しています。
どちらの法案も、性的少数者の人権を守るために考えられたものですが、その方向性やアプローチの仕方は大きく違います。
「LGBT差別解消法案」は、罰則規定を設けることで、当事者が差別だと感じている行為を禁じようというものです。
「理解増進法案」は、広く国民に対して、人権教育や人権啓発活動を通じて性的少数者への理解を増進することで、当事者が差別だと感じている行為や状況を減らしていこうとするものです。
「LGBT差別解消法案」は、即効性はありそうですが、差別認定をどのようにするのかという点が大きな問題になりそうです。また、罰則規定があるゆえに表面上は差別が減っていくかもしれませんが、心の差別感情は消えません。表に出ない形での差別的な行為は、逆に深刻になってしまうのではないだろうか、という危惧があります。
「理解増進法案」は、罰則規定がないため、単なる理念法に過ぎないので効果が見込めないのではないだろうという声はあります。また、理解を浸透させていくには時間がかかるので現状の差別が解消されないままになってしまうのでは、という危惧を抱く人もいます。
2つの法案にこれだけ大きな違いがあるのは、保守とリベラルが「変革・改革」に対して異なる考え方をすることに由来していると思われます。
リベラルは、より早い速度での「変革・改革」を行い、目指す世界を作り上げていこうとします。その過程で多少の摩擦が生じることも織り込み済みでしょう。それに対し、保守はより多くの人の合意を得ながら、いらぬ摩擦が生じないように、「変革・改革」をじっくり進めていこうとします。