特命委員会が進める
アプローチ方法とは?
では、自民党の特命委員会が止まったままなのか、と言うとそうでもないようです。特命委員会としては2つのアプローチで進めようとしています。ひとつは、「理解増進法案」を進めること、もうひとつは現行法でできることを進めていくことです。
すでに2016年5月に菅官房長官に現行法でできる33項目の要望書(性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すための政府への要望)を提出しており、その進捗状況を各省庁に確認して実行できるよう促していくことを進めています。
これにより、既に実行されているものの一部をご紹介します。
■人事院
・人事院規則10-10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)において、「性的指向若しくは性自認に関する偏見に基づく言動も含まれる」と明記されました。
■厚生労働省
・男女雇用機会均等法のセクハラ規定に性的少数者に対するセクハラも対象になると明記されました。
・旅館業に関する衛生等管理要領を改正して「性的指向、性自認等を理由に宿泊を拒否することなく、適切に配慮すること」と明記されました。他にも各府省庁での性的指向・性自認に関する研修が随時進められています。
混沌とした中で、
今後はどう進んでいくのか
性的少数者の人権に関する法律が成立するまでは、まだ少し時間を要するという現状はご理解いただけましたでしょうか。いままで日本には存在しなかった法律を成立させるためには、より多くの国民の間に関心が広がることが必要だと思います。
今年2018年3月13日に、衆議院議員会館で「レインボー国会」という集会が開催されました。
「なくそうSOGIハラ」実行委員会(一部の当事者とヒューマンライツウォッチとアムネスティ日本により結成)と「LGBTに関する課題を考える議員連盟」の共催によるこの集会には、超党派議連のメンバーを中心に10名強の議員が参加しました。挨拶に立った議員は口々に「2020年までに法案の成立を目指す」と口にしていたので、近々何らかの動きがある可能性も考えられます。
これからどのような形で進展していくのか注目していきたいものです。
※本稿は、インクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2018」の掲載記事を加筆修正したものです。