「正直うらやましいですね」。ある地方自治体の長は千葉県流山市の主婦活用に嘆息する。
同市にあるサテライトオフィスに、地方自治体の注目が集まっている。サテライトオフィスとは、企業が本社や支社でもない場所に設置する、遠隔勤務が可能なオフィススペースのこと。自宅勤務とは異なり、民間のシェアオフィスなどを利用するケースが多い。
流山市は、「母になるなら流山市」というPRが功を奏し、20・30代の子育て世代が流入し続ける自治体だが、企業がここにサテライトオフィスを構え始めているのだ。
流山市は共働き世帯の大量流入に成功したが、住民がつくばエキスプレスで都心に通勤することを想定していた。だが、移住した女性はいざ出産・子育てが重なると、やはり都心からの距離がネックになり、退職してしまい、そのまま専業主婦やパート主婦になってしまった。流山市は彼女たちの受け皿となるような働く場を提供できておらず、彼女たちはまさに「余り物」状態になってしまっていたのだ。
先鞭をつけたのは美容系ウェブサイト「@cosme」を運営するアイスタイルだ。「子育て中の社員が流山市に住んでいたが、二人目の子どもの小学校進学を機に『辞めたい』と言い出したことが、サテライトオフィスを考えるきっかけになった」とアイスタイル取締役の山田メユミ氏は話す。都心は空前の採用難。先の社員同様、スキルや能力が高いにもかかわらず、出産・子育てを理由に離職した女性の多さに気づき、同社は「職住近接」をうたった子会社・ISパートナーズを設立した。