現地のサテライトオフィスの立ち上げは、市内在住の女性起業家・尾崎えりこ氏が手を挙げた。市内の空き店舗を利用し、自己資金と補助金、クラウドファンディングでサテライトオフィス「Trist(トリスト)」を、2016年5月にオープンした。
企業が同施設を利用する流れを簡単に説明しよう。まず、流山市で説明会を開いて人材を確保し、社員として直接雇用する。その上で、企業はTristに座席料を支払って、社員になった女性たちにリモートワークをしてもらうことになる。初めはISパートナーズの5名だけだったサテライトオフィスワーカーは、いまや11社50名に上り、今年4月には2号店を出店したほどだ。
企業側がサテライトオフィスの活用を進めるのは、都内で人材を採用できないのが最大の理由だ。最近では通信インフラや在宅勤務の仕組みが整っている会社も多く、地方での採用のハードルは低くなってきた。
地方での採用は、コスト面でも魅力がある。説明会を開くだけで人が集まるため、採用コストが抑えられるし、もともとスキルのある人が集まるため教育コストも低く抑えられる。もちろん、通勤代もあまりかからない。また、スキルがあってもパート勤務やブランクのある女性は、新卒程度の給与で雇っている企業も少なくない。
ISパートナーズは、横浜や新潟・六日町でもサテライトオフィスのトライアルを行っているという。シェアオフィスで仕事をするチームを増やしていくという方針で、「もはや自前のオフィスを作る時代ではない」と山田氏は断言する。
このように、企業と女性のニーズがマッチし、政府の女性活躍推進も後押しして、現在、主婦の再就職は一種のブームを起こしている。女性の再就職支援サービスを行うWarisのワークスタイルクリエーター、小崎亜依子氏は、「一旦主婦になった女性を採用する企業が増えている。再就職を希望する主婦は全国に44.5万人いると推計(出所:総務省「就業構造基本調査」2012年)されるが、これは就活生の42.3万人(出所:リクルートワークス)に匹敵する大きな市場だ。職種としては小売りや介護など現場仕事のニーズが高いが、非正規雇用から正規雇用への間口が広がったことは大きな変化」と話す。