流山市サテライトオフィス「Trist」「Trist」2号店の外観。市の倉庫を改装した

 こうした流れに、熱い期待を寄せるのが、地元の活性化を図りたい地方自治体だ。サテライトオフィス誘致では宮崎県日南市や徳島県神山町の事例が有名だが、離職主婦に目をつけたのは流山市の戦略である。「地方では、子育て世代で仕事を辞めてしまった女性は、パートでも働ければ御の字の状態。雇用の選択肢が生まれることは、自治体の差別化にもなる」と冒頭の首長も言う。

 しかし一方で、「あれは流山市だからできるのだ」(他の自治体関係者)と言い捨てる人もいる。郊外の流山市の場合、結婚や出産で止むを得ず離職した女性が多い。しかし、もっと田舎の方に行くと、そもそも社会人経験のない女性が多く、企業のお眼鏡にかなうようなスキルの高い女性がいない。そんな田舎まで企業は来てくれない、と諦めの声も上がっている。

 実は、そこに問題の本質がある。いくら女性自身に働く意欲があっても、「スキルが低いのだから、女性はパートでいいじゃないか」という周囲の空気が生まれる。そうなると、自らスキルアップやキャリアアップを志向する女性が出てきにくくなるというスパイラルに陥るのだ。「『うちは女性の活躍を応援していますよ』という空気を、自治体が醸成することが必要」(山田氏)なのである。

 そもそもサテライトオフィスで求められる人材は女性に限らない。Trist2号店には、職住近接を求める男性も入居可能だ。企業も働く人の意識も変わりつつある。第2、第3の流山市の登場が、地方創生の起爆剤になるかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 相馬留美)