経験者が異口同音に
「あり得ない」と断じるプレーで注目

 確かにアメリカンフットボールの見どころのひとつがタックルだ。攻撃側は前進を繰り返し相手陣奥のエンドゾーンまでボールを運べばタッチダウンで得点になる。防御側はそれを体を張って止めるわけだ。が、それは了解事項。プレー中は双方がそれを想定してぶつかっているから危険は少ない。また、攻撃の司令塔であるクオーターバックをつぶすクオーターバックサックというプレーも見どころのひとつだが、この場合もクオーターバックは相手の当たりに体も頭も備えているから、大事に至ることは少なく、許されている。

 加えて選手は相手をリスペクトしている。フットボールに魅せられ、レベルアップのため同様に日々厳しい練習に耐えている仲間。また、双方が万全の状態で力を出し合ったうえで勝ちたいという意識もある。

 今回の悪質タックルは日大の内田監督が「クオーターバックを壊せ」と選手に命じたのではないかといわれている。勝利のために相手の戦力をダウンさせようというわけだ。内田監督は言葉を濁しているが、日大関係者や現役選手の証言もあり、そうした指令があったと考えてよさそうだが、選手としてはそんなことをしても少しもうれしくないし、罪悪感に苛まれるはずだ。

 このプレーに対してメディアに登場したフットボール経験者は「あり得ないプレー」、「長年プレーしてきたが、見たことがない」、「選手が独断であのプレーをすることは絶対ない」といったコメントを残している。筆者も知己のある元選手に聞いたが「論外」と吐き捨てた。

 今回は、そのあり得ないプレーが注目されてしまったわけだ。この映像と騒動でアメリカンフットボールを知った人もいるはずで、なんて野蛮なスポーツだろうと思ったに違いない。

 日大側が行った悪質タックルは、生活の多くをフットボールに捧げレベルアップを自らに課し、競技の魅力を知ってもらおうと積み重ねてきたフットボール指導者や選手の地道な努力を突き崩した暴挙といえる。今回の問題を最もやりきれない思いで受け止めているのは彼らにちがいない。

 内田監督も選手経験があるようだが、なぜその思いが分らなかったのだろうか。

(スポーツライター 相沢光一)