その後B課長はAの件を部長に報告すると、部長の返答は意外にも慎重だった。

「この間、労働基準監督署から指導を受けたばかりだ」
「はい」
「今回は別件とはいえ、もしA君が労働基準監督署に行き、ウチが問題企業だと思われたら困る」
「そうですね」
「そうなる前にA君の処遇について専門家に相談してきてくれないか?」

社労士のアドバイスに
会社は管理職会議を準備

 B課長は、早速A君の件をどう扱ったらいいのか相談しようと、大学時代の同級生でもあるE社労士を訪ねた。

「ウチの就業規則では副業は禁止になっている。隠れバイトしていたAは当然クビた!あいつホントバカだよな!」

 息巻くB課長をしり目に、E社労士はB課長が持参した就業規則を読み込んでいた。読み終えると、E社労士は言った。

「確かに、甲社の就業規則を見ると副業は禁止となっている。それに規則違反した場合の懲罰規程もある」
「そうだろう?」
「そうすると、A君の場合は懲罰対象だよね」
「だから彼はクビなんだ!」
「おいおい、この場合、A君をクビにすることはできないよ」
「どうして?」

 E社労士はアドバイスを行った。その内容は以下の通りである。

 (1)会社に黙ってバイトをしたA君の行為は懲罰対象となるが、処分の内容については社内での検討を要する。ただし今回の件でAをクビにすることは、厚生労働省モデル就業規則第67条3項(*下記参照)を判断基準にすると難しい。
 (2)会社は今後、社員の副業についてどう扱うのかを検討すること。状況によっては就業規則の改定が必要となる。
 (3)B課長個人に対しては社員のプライベートについて、軽々しく批判や他との比較をしないこと。場合によってはパワハラとなる。
平成30年1月新設・厚生労働省モデル就業規則・第67条(副業・兼業)
 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
 ①労務提供上の支障がある場合
 ②企業秘密が漏洩する場合
 ③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
 ④競業により、企業の利益を害する場合