日本では、監査法人が行う監査を外部がチェックする仕組みとして、日本公認会計士協会が行う「品質管理レビュー」がある。

 協会から派遣された調査員(公認会計士)が現場の会計士に監査結果について直接質問したり、資料の書き換えを指摘したりして、監査が十分だったかどうかをチェックするもので、大手監査法人は毎年、中堅以下の監査法人なら2~3年に一度のペースで協会からチェックを受ける仕組みだ。

 関係者によると、協会に対しても金融庁幹部から「協会の指導が緩いのではないか。監査法人の監督を、金融庁が直接することも検討している」といった話が伝えられたという。

自己防衛意識が過剰に
「手間のかかる企業」は忌避

 監査現場にはプレッシャーとともに不満が強まる。

 ある公認会計士によると、品質管理レビューが急に厳しくなり、業務負担も増えたという。

「不正会計はともかく、現金や借入金などの勘定項目をチェックする仕訳テストや、過去の2年分の財務諸表と突き合わせて調べるバックテストのような細かい監査は、協会の担当者もお互い公認会計士なので、負担を考慮して大目に見てくれていた。だがいまは監査をきちんとしたことを第三者に見せるための文書を、新たに大量に作らなければいけなくなった」

 また大手の監査法人の会計士は「自社が会計士に義務付ける監査項目の数が増えて、煩雑度が増した。(監査法人の)内部監査室の発言力も強まっている。会計士が判断する裁量はほぼなくなっている」と語る。

 監査法人側には過剰な自己防衛意識も働いているようだ。

 経営者が会計士の言うことを聞かなかったり、コンプライアンスが欠けていたりする企業とヘタに監査契約をし、実際に不正会計を起こせば、ただでは済まないからだ。金融庁からにらまれるだけでなく、翌年以降の監査レビューはさらに厳しいものになり、業務負担がさらに増すという悪循環に陥る。

「以前に比べ、チェックする項目が増えた分、報酬をたくさんもらわないと運営を維持できない。必然的にリスクが高そうな企業はわざと高い報酬を提示して、向こうから契約を切らせるようにもっていくこともある」と大手監査法人の会計士は声を潜めて言う。

 結局、リスクがあり、監査に手間のかかる企業を監査法人側が”忌避”することになっているという。