画面がスタジオに替わった。

 地震当時の映像が流された。テレビ局内部もやはり機材が散乱し、足の踏み場もない状態になっている。

〈それでは、能田総理の声明が官邸から出されます〉

 アナウンサーの声と共に画面が切り替わった。

〈昨夜午後7時41分、南関東地震が発生いたしました。政府としてはあらゆる対策は取っております。どうか、落ち着いて行動してください。現在、都内の全ての交通機関は止まっております。一部で電気、水道、ガスなどのインフラが止まっていますが、出来る限り早急の復旧を目指して努力しております。帰宅困難者の方々は最寄りの避難所に一時、避難してください。一部のJR、地下鉄を除いて、交通網も夕方には復旧するとの報告を受けております。今後、余震に注意して落ち着いた行動を取るようお願いします〉

 能田総理は深々と頭を下げた。

「どうもはっきりしない声明だな。東京はこれで大丈夫なのか」

「大きな建物被害はなさそうでした。高層ビルは揺れただけです。住宅火災は何件かあったようですが、大火には至らなかったようです」

 携帯電話を耳に当てている男が言った。

「しかし寒いな。暖房は切られているのか」

「電気は地下の非常用電源によるものだ。停電が長引きそうだから出来る限りの節電をするようにと通達があった。燃料に限りがあるんだ」

「電気はいつもは早く復旧するんだけどな。今日いっぱい停電が続くと、いよいよ電気が切れるぞ。ここの非常用電源は10時間程度の燃料しかないはずだ」

 そのときガタンという大きな音とともに揺れが始まった。10秒ほどで引いていったが、片付けたばかりのデスクの上の書類が床に飛び散っている。

「床の書類だけでも片付けましょう。これじゃ、歩くことも出来ない」

「どうせすぐにまた余震でバラバラさ。しばらく放っておいたほうがいいんじゃないか」

「夜が明けるとよけい忙しくなります。今のうちに出来ることはやっておきましょう」

 森嶋の言葉で全員が立ち上がった。 

                         (つづく)

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