シニフィアンの共同代表3人による、日本企業における「取締役会について」をテーマにした床屋談義「シニフィ談」の第3回(全5回)。(ライター:福田滉平)
「ツッコミ合わない」のがお約束
小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):最近でこそ、執行と経営が分けて考えられるようになってきましたが、昔は事業部門から順当に上がった人が、取締役にずらーっと30人ぐらい並んでいる会社って、いっぱいあったじゃないですか。
日本取締役協会のセミナーに参加した時もその話になったことがあるんだけど、執行の責任者がずらっと並んだ状態の取締役会で、「○○部門の数字、どうなってんねん」とか言われると、「お前の部署も業績悪いやろ!」ってブーメランが戻って来かねないから、突っ込みづらくなるよねと。要は、取締役会に事業責任者が混ざると、途端に相互忖度が始まって、「ツッコミ合わない」っていう雰囲気が生まれてしまうんですよね。
朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):自分が関わってきた会社の取締役会を思い返すと、管掌部門を持つ取締役だからといって、露骨に自部門の利益を代表するような主張をされることはまずないし、基本的にはみんなフラットに話そうと意識してはいるものの、それでも一部、どうしても考えが自部門に引きずられているように見受けられることはありましたよね。
村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):やっぱり、執行と経営を分離しろと言われても、個人の頭の中では、なかなか分離できへんということですよね。
小林:取締役会に、管轄部門ごとの取締役が占めてしまうと、それぞれの部門ごとの施策レベルの話になってしまって、途端に執行側の話になったりするんですよ。「今度、この事業ではこういうイベントを実施して……」みたいな。
村上:経営のビックピクチャーじゃなく、完全にミクロなオペレーションの話になってしまっている。
小林:そう。そういう意味では、どのレベル感のテーマを取締役会で話すかというのは、結構難しい問題だと思うのよ。取締役会のアジェンダ設定を工夫してる会社って、すごくよく考えているんですよね。アジェンダ設定が事務局仕事ではなく、まさに経営イシューとして位置づけられている。