取締役会のアジェンダ作りに会社のカラーが表れる

村上:アジェンダ作り、これはほんと重要なポイントやね。誰がアジェンダを作っているのか。
執行役がいろんな部に聞きまくって作っているのか、誰かがオペレーションの人をまとめているのか、ボードはアジェンダ設定に関与せずに議論するのか、社長が議題を決めてしまうのか、アジェンダづくりにもいろんなパターンがありますよね。

朝倉:たとえば営業会社の取締役って、役員の顔ぶれを見た瞬間に「これ、営業会議やんか」ってなりません?

小林:「○○には電話したのか?」みたいな感じで(笑)

朝倉:他業界も然り。ゲーム会社の役員就任人事を見ていると、コンテンツ出身ばっかりで、「これ、コンテンツ会議やん」って思うこともある。別にそれが大企業の子会社で、実質的には事業部的な位置づけというのならいいと思いますよ。でも、上場会社がそれだとまずいでしょう。前回話したように、役員のポストが論功行賞の道具として扱われているから、事業面で貢献した人にポストを配っているのでしょうね。

小林:アジェンダには、会社のカラーが出ると思いますね。前に大手保険会社の取締役の方から聞いたんですけど、その会社は、世間から見ればいわゆる古い、堅いタイプの会社で、てっきり取締役会でも儀式的なやりとりをしてんのかなと思っていたら、まったくそうじゃなかった。取締役会をいかにコンパクトにし、有意義なことに時間を割くかを考え、徹底的に効率化して書類で終わることは全部書類でさばく。その結果として空いた時間で、ふわっとしてアジェンダレベルとしては顕在化してないけど、経営にインパクトが起こりうることを役員陣で議論しているそうです。
たとえば、マクロ的な環境変化って、長期視点すぎて個別の議題にはなかなかならないんだけど、社外取締役が「本当にこの問題、リスクないの?」って確認するとか。
でも実際には多くの会社がその対極にあって、「規定の変更です」とか、個別の議案として具体化したことだけをプロセスとしてこなしてるほうに比重が寄っていると思う。

朝倉:取締役会でしか決められないこともありますからね。

小林:会社法上、間違ってはいないんだけど、比重が偏ってくると、だんだん取締役会は形式的なことに判子を押す場で、経営会議が実質的な議論をする場になってしまう。このパターンは周りのスタートアップでも結構聞いたりする。

村上:そうなればなるほど、社外取締役って存在意義を発揮しづらい。要は、アジェンダが決まっていて、しかもそれがオペレーション寄りの内容ばかりになっていると、口を挟むところがなくなってしまう。ある程度は社外取締役の人が話せる「スペース」をアジェンダや運営上作っておかないとね。そのスペースなしでは、結局、「はいはい、形式上2人くらい社外取締役は置いてますけど」くらいの扱いにしかならないよね。

朝倉:逆にそういう状態だから、知見の欠けた人でも社外取締役になれたりするんだと思います。社外取締役を置いているという事実が、免罪符になってしまいかねない。

小林:でも、良い会社はめちゃくちゃアジェンダ・コントロールがイケてるんだよね。ふわっとした議題をちゃんと議論して、経営陣の意識レベルを揃える。そういう運用をしている会社も中にはある。

村上:そうしたイケてる会社のイケてる状況が広く一般にシェアされているわけじゃないし、イケてない会社はただでさえ変化が難しい文化だから、一層そのまま放置されてしまっているんやろうね。