JR東日本は3日、首都圏を走る在来線と新幹線の全車両に防犯カメラを設置すると発表した。今後、ほかの私鉄にも同様の取り組みが広がっていくだろう。防犯カメラにはどの程度の効果が期待できるのだろうか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
LEDライトにカメラを併設
JR東日本が開発した簡易手法
JR東日本は3日、鉄道車両内におけるセキュリティーレベルを向上させるため、在来線車両約8300両と新幹線車両約200両に防犯カメラを追加設置すると発表した。これにより首都圏を走るすべての在来線と新幹線車両に防犯カメラが設置されることになる。特筆すべきは通勤型車両にもカメラを設置するとしたことで、車両内の出入り口付近にカメラ付きLED蛍光灯を設置するとしている。
昨年6月には、山手線の新型車両E235系(計50編成550両)に、1両当たり4台の車内防犯カメラを設置すると発表、さらに今年4月には今後新造するすべての新幹線、在来線車両に防犯カメラを設置する方針を発表したばかりであったが、先月の東海道新幹線車内における無差別殺傷事件の発生を受けて、取り組みをさらに加速させたようだ。
既に東急電鉄は2016年3月に、2020年までに全車両に防犯カメラを設置すると発表しており、東京メトロと都営地下鉄も昨年3月に全車両への設置拡大方針を示している。今回JR東日本がLED蛍光灯にカメラを併設するという簡易な手法を示したことで、今後はほかの私鉄にもカメラ設置の動きが拡大していくことになるだろう。
初めて本格的に車内防犯カメラを設置した鉄道車両は、2007年に登場した東海道新幹線のN700系車両だった。死角になりやすいデッキ部分の防犯対策として乗降口付近を撮影するカメラを新造時から設置している。JR東日本も2008年から導入を開始した山形新幹線用E3系車両のデッキ付近に防犯カメラを設置するなど、新型車両への搭載が一般化しはじめたのはこのころである。
また2008年にはJR東海道線の普通列車グリーン車の車内で乗務員が暴行される事件が発生したことを受け、グリーン車のデッキに防犯カメラが設置された。2009年12月には、首都圏で痴漢発生件数が最多のJR埼京線に車内防犯カメラを試験設置し、2010年6月からは、JR東日本が所有するすべての埼京線車両の1号車に4台の防犯カメラを設置する対策に着手している。1号車のみの設置としたのは、混雑がもっとも激しく、痴漢被害も多い車両だからだ。