「昨シーズンをもって、アトレティコをやめようと決めました。同時にヨーロッパに残る選択肢もなくなった。新しい挑戦をどこで始めようかと考えた時に、日本という選択肢が浮上してきたんです」

 アトレティコからの退団を表明したのが4月9日。直後に届いた電光石火のオファーがトーレスの胸を打ち、年俸を含めた条件でははるかに上回るアメリカのシカゴ・ファイアー、中国の北京人和、オーストラリアのシドニーFCなどと繰り広げられた争奪戦を制する最大の決め手となった。

現在、チームはJ1で17位と不振
トーレスに起爆剤としての役割を託す

「ずっとアタッカーを探していた中で、プレーだけでなく人柄を含めたすべてが1を1.1に、いや、1.2にできる選手として、強化部とも話してすぐにリストの中でナンバーワンにしました」

 トーレスへ熱いラブコールを送った理由を、竹原社長は笑顔を浮かべながらこう説明する。スペイン代表として110試合に出場して、38ゴールをあげたトーレスは端正なマスクとピッチ外での紳士的な振る舞いで万人から愛され、いつしか「エル・ニーニョ(神の子)」と呼ばれるようになった。

 3月で34歳になったが、相手の最終ラインの裏へ抜け出すスピードは衰えていない。多彩なフィニッシュのパターンも持ち合わせていて、昨シーズンもラ・リーガ1部、スペイン国王杯、そしてチームが頂点に立ったヨーロッパリーグの公式戦で計10ゴールをあげている。

 一方でJ1を戦って7年目になるサガンは、J2への降格圏となる17位でワールドカップ・ロシア大会に伴う中断期間を迎えた。不振の原因は得点力不足に尽きる。中断前の15試合であげた14ゴールはリーグワースト3位タイ。元コロンビア代表FWのビクトル・イバルボがコンディション不良に悩まされていたこともあり、3ゴール以上をマークした選手が不在だった。

 第6節からは泥沼の7連敗を喫した。この間に開催されたサポーターとの対話集会の席で、竹原社長は「少し背伸びをしてでも補強する」と宣言。まさに有言実行の形で、2010年のワールドカップ・南アフリカ大会の優勝メンバーでもあるビッグネームをチームに迎え入れた。

「今の順位は不本意ですが、クラブとしてのポテンシャルは決して悪くない。彼が来てくれることによって、他の選手たちがよりクオリティーやモチベーションを高めて一段高みを目指せる。チームの推進力を上げ、強いチームを作るトライアルをするためにも絶対に必要な選手でした」