はい。会社分割をして新たな会社を作るかたちになります。

――これは日色社長自身がかつて立て直した事業ですよね。

 すごく寂しいですよ。でも、「サイファー」という薬剤溶出型のステント(血管などを内部から広げる管)のケースを考えると、納得せざるをえません。

 心臓のステントは過去10年、20年の医療技術においてトップクラスの発明だと思っていて、うちは心臓ステントも、その薬剤溶出型も最初に開発した。それがレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)になって、撤退しました。

 当時、「え?」って思いました。米IBMがパソコン(PC)事業を売却したときの驚きに似ています。結局、今考えるとその判断は正しかったかなと思う。時代や市場の変化、技術の進化を前にして立ち止まってはいられない。

――PC事業を売却したIBMはITサービス会社になりました。医療機器においても診断機器の世界メガはハード売りからサービス、ソリューションを売るビジネスへシフトしてきています。J&Jも同じ道へ進むのですか。

 彼らは機器の保守やメンテナンスを継続的に提供してフィーを受け取る部分を拡大して、デジタルソリューションでフィーをもらうモデルを築いています。でもうちは、治療機器や医療器具そのものが中心であり続けるでしょう。

――診断機器を中心とした企業と治療機器メーカーでは、感覚というか、カルチャーが違うのでしょうか。

 ちょっと違います。AIなど使ってデータ解析すれば、もっと良い治療につなげられます。そうしたデジタルソリューションで対価を得るモデルはもちろん考えますが、治療機器や医療器具のポテンシャルを最大限に発揮するためのサポート的位置づけです。

 治療に使う機器や器具そのものの価値が一番大きいことは変わらない。その価値を上げることが最大のテーマです。

ひいろ・たもつ/1965年生まれ。88年静岡大学卒業後、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)入社。96年幹部候補の研修プログラムで米国赴任、2005年J&Jのグループ会社オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社長、08年同社アジアパシフィック事業統括、10年J&Jメディカルカンパニー成長戦略担当副社長、シニアバイスプレジデント、12年より現職