米グーグルが最新の取り組みを披露する開発者向け会議「グーグルI/O」で、AI(人工知能)の有効な応用先として強調されたのは医療だった。ITの巨人は医療の世界をどう攻略するのか。その戦略に迫った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)
ビーチバレーのコートで社員が遊び、巨大な恐竜の化石の模型が目を楽しませてくれる米国マウンテンビュー市のグーグル本社。まるでリゾートのような中庭に面する41番ビル2階の小部屋に、グーグルが開発中の特別な顕微鏡がある。
顕微鏡にセットされていたのは、乳がんの組織切片だ。専門的な訓練を積まなければ、顕微鏡をのぞき込んでも、どこにがん細胞があるのかを見分けることは難しい。ところが、この顕微鏡ではそんな心配は要らない。なぜなら、がん細胞の位置をAI(人工知能)が教えてくれるからだ。
顕微鏡をのぞき込むと、蛍光ペンで描いたような緑色の線に囲まれた領域があった。この中にあるのが、がん細胞だ。
顕微鏡を操作して、視野や倍率を変えても、緑色の線は画面の動きに合わせて、がん細胞の位置を示し続けた。
これが、グーグルが開発中のAR(拡張現実)顕微鏡である。
開発に使われている顕微鏡は、グーグルが画像診断で提携しているニコン製。光量調整用のペンライトを、チューインガムを使って貼り付けている工夫から、“グーグルっぽさ”が伝わってくる。