課長クラス以上のマネジャーにとって「会議術」は、チームの生産性を上げるために必須のスキルです。ところが、私たちには「会議術」を体系的に学ぶ機会がほとんどありませんから、悩んでいるマネジャーも多いのではないでしょうか?そこで、ソフトバンク在籍時に「会議術」を磨き上げ、マネジャーとして大きな実績を残した前田鎌利さんに『最高品質の会議術』(ダイヤモンド社)をまとめていただきました。本連載では、その内容を抜粋して掲載してまいります。

「ブレストなんて意味がない…」と言う前に、マネジャーが注意すべきこと

「アイデア会議」と「Q&A会議」

 会議の目的は、情報共有でも、伝達でもなく、意思決定です。「決める」ことが、会議の本質なのです。このことを忘れて、情報共有や伝達など、意思決定とは関係ないことに、貴重な会議の時間を費やしてはなりません。
 ただし、意思決定を求めるべき提案内容をブラッシュアップする過程では、適宜、少人数ミーティングの場でブレインストーミング(ブレスト)を開く必要があります。ブレストそのものは意思決定を目的とするものではありませんが、ブレストを通じて会議にかける提案の質を高めることができますから、これも「会議の品質」を高めるうえでは重要なポイントとなります。

 ブレストとは、ご存知のとおり、複数の人が特定のテーマについてそれぞれのアイデアを出し合い、掛け合わせることで新しい発想や解決策を導き出すことを目的としたミーティングのことです。その手法はさまざまなバリエーションがありますが、私は「アイデア会議」と「Q&A会議」の2種類の手法を活用しました(下図)。

「ブレストなんて意味がない…」と言う前に、マネジャーが注意すべきこと

 両者はそれぞれ役割が異なります。
「アイデア会議」とは、プロジェクトの初期段階において、発想の幅を広げるために行うものです。担当者だけではどうしてもアイデアが限定されますから、複数の参加者に予算などの制約は無視して、自由にアイデアを出してもらうことで、できる限り多くのアイデアを集めるのです。

 そして、「アイデア会議」で集めたアイデアを、担当者(担当チーム)が「自分の頭」で精査。練り上げた提案を「Q&A会議」において第三者に、予算などの制約も意識しながら、さまざまな角度から質問を投げかけてもらうことによって、提案の精度に磨きをかけたうえで、定例会議などで意思決定にかけるわけです。このプロセスを経れば、当然、提案内容の質が高まりますから、結果として、必然的に意思決定の精度も高くなるのです。

 なお、急ぎの案件の場合には、ブレスト会議にマネジャーが参加して、その場で意思決定することもあり得ます。このあたりについては、柔軟に考えるほうが、意思決定スピードを速くすることができます。上図のフローは、あくまで概念図ですので、これを忠実になぞることに意味があるわけではないことを申し添えておきます。