このような事業における「攻め」と「守り」を同時に推進する経営スタイルの中に、岡藤CEOが就任後スローガンとして掲げた「か・け・ふ(稼ぐ、削る、防ぐ)」といった方針が浸透していることが読み取れます。

 商社のビジネスの根幹がトレーディングと事業投資であることからも、商社の成長を支えているのは、事業や市場の状況を見極め、舵取りを行っていく「人材」そのものと言えます。

 伊藤忠の従業員数は、本体に関しては4000人強と、三菱商事や三井物産と比較すると7割程度の規模ですが、グループ全体の従業員数は10万人を超えており、他の商社を圧倒する規模です。

 では、この巨大な戦力をどのように活用しているのでしょうか。

先陣を切って旧来型の人事モデルを
変化させてきた伊藤忠

 商社といえば、グローバル事業を牽引する代表的な業界という印象が強いかもしれません。確かに事業としては、他の産業に比べて早い段階から海外進出し、海外における事業を開始しています。

 しかし、人事の観点からすると、昨今多くの日本企業が取り組む人材のグローバル化とは少しモデルが異なります。

 商社の海外事業は、主に現地の日本企業との取引を中心としていました。そこで、いわゆる“駐在員”という形で、本社である日本から世界各地に人員が派遣され、その国ごとに日本企業との取引を通じて事業を拡げてきました。

 このようなグローバル人事のモデルを「セントラル人事」と呼びます。商社だけではなく、日本では例えば銀行業界も同じようなモデルによって国際化を進めてきたと言えるでしょう。

 一方、製造業を中心に多くの日本企業が現在取り組んでいるのは、海外現地の人材を活用し、いわゆる現地化を推進する「マルチナショナル人事」というモデルです。

 現地の日本企業だけではなく、各国のマーケットに深く入り込み、各国の企業や顧客を相手に事業を展開しようとすると、駐在日本人だけでは限界があります。現地法人の主要なポジションに現地人材を登用し、育成していく必要があるのです。