「1回だけ売り込んで買ってもらう」から
「長くたくさん使ってもらう」へ

Growth mindset(成長マインドセット)
Customer obsessed(常にお客さまのことを第一に考える)
Diversity and Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン)
One Microsoft(ワン・マイクロソフト)
Making a difference(変化をもたらす)

 そしてCEO自らが、就任から間もないタイミングで大胆なチャレンジに踏み出す。未来を見据え、グロースマインドセットを本当に実践してしまうのだ。

 それこそが、ソフトウェアからクラウドへのビジネスの大転換であり、Windowsの無償化という驚くべき決断だった。事業の屋台骨をひっくり返すと宣言したのだ。

 マイクロソフトは創業以来、ソフトウェアのライセンスビジネスによって売り上げを立ててきた。1台のパソコンにOSであるWindowsが入り、Officeをはじめとしたアプリケーションが入り、それらはライセンスの形で販売された。

 アップデートが行われれば、有償でライセンスが与えられた。アップデートの度に、課金ができるというビジネスモデル。これが巨額の売り上げ、利益を生み出した。

 コンシューマー向けから法人向けにシフトした後も、ライセンスは売り上げの主軸だった。ライセンスを獲得するために、さまざまな取り組みが進められていた。

 ところが、ナデラCEOはこのビジネスのスタイルを変えていくと宣言するのである。これが何を意味するのか。極めてわかりやすく説明してくれたのは、日本マイクロソフト業務執行役員 コーポレートコミュニケーション本部 本部長の岡部一志氏だ。

「例えば営業が売り上げを立てるのは、これまで何本のライセンスを販売することができるかというものでした。ところがこれが、どれくらいマイクロソフトのクラウドを使ってもらいコンサンプション(消費量)を獲得できるか、に変わったんです。ソフトウェアを購入してもらうのではなく、クラウドサービスをいかに使ってもらえるかということ。こうなると、仕事のスタイルはがらりと変わらざるを得ません」

 1回だけ売り込んで買ってもらえばいい、という商売ではなくなる。信頼関係を築き、さまざまな提案をすることで、長くたくさん使ってもらうという商売をしなければいけなくなるのだ。発想の大転換が必要だった。そのキーワードこそ、「オープン」だった。

 そして、ナデラCEO自らがその先頭に立って仕事を変えていく。驚くべきことに、なんとかつてのライバルと手を組み始めたのである。