在英日系企業では、約4分の1が拠点の見直しを実施・検討していると回答した(そのうち8割以上の企業が、販売や統括、生産など、機能の一部移転を実施・検討と回答)。移転可能性のある国では、ドイツが23社と最も多く、次にオランダ(6社)、アイルランド、フランス、ベルギーなど(それぞれ2社)となっている。
 
 在英日系企業が挙げたブレグジットへの懸念(複数回答)を見てみると、先行きの不透明感による投資減退や関税引き上げによる物価上昇・消費鈍化などによる「英国経済の不振」(69.4%)が最大の懸念になっている。以下、関税などの「英国の規制・法制の変更」(54.1%)、「ポンド安の進行」(52.1%)、「英国拠点からのEUへの輸出」(44.2%)、「英国での人材確保」(42.6%)となった。

 英国に関する懸念が上位になっているが、一方で「EU経済の不振」(31.4%)、「ユーロ安の進行」(17.8%)を懸念材料に挙げる企業もある。

 このアンケートは、メイ首相が「ソフト離脱」の新方針を表明する前のものだ。欧州との「財」の取引を従来通り維持するという新方針を「歓迎」する企業は少なくないと思われる。だがこの新方針が奏功せず、「交渉なし離脱」が現実として目の前に迫ってからでは、企業に残された対応の時間はほとんどない。

 ジェトロの調査では、在英日系製造業は英国内で平均25.2%の部品・原材料を調達する一方で、EUからも18.4%を調達している。製造業などは、工場用地や設備・原料といった生産拠点の確保や、サプライチェーンの再構築など、企業の調整コストが高く、時間を要する場合が多く、対応できずに、混乱や負担がより大きくなる懸念がある。

 また、人材確保はどのような離脱パターンでも課題になるが、「交渉なし離脱」となれば、関税の影響は最もネガティブな影響が大きくなりそうだ。また、一段のポンド安が進行することは避けられないとみられるため、輸入物価の上昇を通じたコスト高や物価高を通じた内需不振が、英国内需向け企業を直撃すると考えられる。

 現時点でEU側から、ブレグジットによるEU各国に対するマイナスの影響を指摘する声は多くはない。だが「交渉なし離脱」に陥った場合は、物流の停滞が欧州圏全体の経済活動を下押しするリスクが高まる。

 ただでさえ、米中貿易戦争の拡大で世界貿易の縮小が懸念されるなかで、英国、EUともにこうした先行き不安から投資減少などを招き、世界経済は景気後退局面への転換を早める可能性もある。