37歳の僕は、5年後に80歳になる…ぐらいの時間感覚

けんすう そもそもお金を使うって難しいですしね。僕は、資金調達の前後で、預金残高が3万円から3億3003万円になって。すると、VC(ベンチャー・キャピタル)からもすごく「使え」って言われるんですよね。どう使うかが大変でした。VCからしたら、資金を有効に使ってもらわないと出資した意味がないわけですし、そもそもお金って、使わないと(価値が)減るじゃないですか。

朝倉 お金って、貯めたり稼いだりも難しいけど、使うことってそれ以上に難しいよね。特に組織になると。

けんすう 物語を転がさないと、物語が終わってしまう、という感覚ですよね。お金を使わないと、物語が転がらない。失敗してでも物語を進めていかないと、止まっちゃう。

朝倉 けんすうが、Twitterでよく学生の人たちに「とにかく時間が大事」と言っているのも、その時々の自分の価値の源泉が何かという発想に結びついているように思いますね。

けんすう お金の価値と似た話で、使える時間もどんどん減っていきませんか。どこかで聞いたのですが、人が一生のうちで睡眠時間などを除いて自分のための時間を生きられるのは、たった9年分しかないらしいんです。そう考えると、貴重じゃないですか。特に、20代の1年間はメッチャ貴重ですよ。20代で何もやってきませんでした、というより、これだけやって全部失敗しました、というほうがいいので。

「1億円儲けるより、100億円の損を出せ」「訴訟されるくらい失敗しろ」?!<けんすうさん×朝倉祐介さん 特別対談後編>「若いうちに自由に使える時間が沢山あったほうがいい」と朝倉さん

朝倉 最近、バイオテックで寿命が100年とか120年になるという話がありますけど、それ自体は素晴らしいこととは思うものの、歳を取ってからの時間が長くなるのが、果たして本当に幸せなのかというと、少々疑しく思う気持ちもどこかにある。よく「睡眠を削ると寿命が縮まる」なんて言うけど、もしも一生の間の総活動時間が一定だとしたら、寿命が短くなってでも若いうちに自由に使える時間が沢山あったほうが絶対いいよね。

けんすう 本当にそう。歳を取るにつれて、時間の進みは早く感じられるじゃないですか。僕はいま37歳ですが、実感値でいくと、5年後ぐらいには80歳ぐらいになる感覚があるんですよ。だから、ヤバいなーとすごく思う。経験というインプットの価値が高いのはやっぱり20代までで、30代になるとそれが減る感覚があって。20代であれば、仮に恥をかいてもリスクがないですし。僕自身、20代前半は、裁判や警察沙汰に時間を費やしたんですが、20代だったからかわいいんであって、今それやったら「あいつ、おかしいんじゃないか」と思われるじゃないですか(笑)。

朝倉 「訴訟されたほうがいい」って言ってたね(笑)。

けんすう そう語ってる昔のインタビュー記事が、最近Facebookで出てきて、我ながらびっくりしましたね、「そんなわけないじゃん!」て(笑)。まあ、たしかに経験値は積めましたけど。裁判では、相手が悪いと言い続けるのが正義ですから、相手方の50代ぐらいの弁護士にぼろくそに言われ続けましたけど、なかなかできない経験なので面白いなーと思いましたね。

朝倉 タフになるよね。

けんすう 相手も仕事で怒ってるわけだから、別にいいかなと思えましたね。

朝倉 さすがだ。そんな境地に行き着くんですね。今日はありがとうございました!