AIに仕事が奪われるという脅威論がある一方で、AIを効果的に活用した仕事の取り組みも進んでいる。マイクロソフトの「Office 365」には、AIを活かして働き方を分析し、個人に気づきを与える「My Analytics」という機能が備わっている。これを活かせば無駄な会議や作業を減らし、付加価値の高い仕事を行うことも可能だという。個人の時間の使い方を大きく変え、残業時間の管理にも役立ちそうだ。AIを活かした働き方は、この先、私たちのワークスタイルを大きく変えるかもしれない。3000人以上を取材したブックライターの上阪徹氏が、日米幹部への徹底取材で同社の全貌を描きだす新刊『マイクロソフト 再始動する最強企業』から、内容の一部を特別公開する。
世界中の働き方を変える「Microsoft 365」の可能性
これまでマイクロソフトの知られざる姿、技術について語ってきたが、AIをはじめとしたさまざまなテクノロジーを盛り込み、ビジネス領域でのひとつの成果として、マイクロソフトが満を持して世に送り出した最新のビジネス向けソリューションがある。
それが、2017年8月(大企業版が8月、中堅中小企業版が11月)に発売になった「Microsoft 365」だ。
史上最高の包括的なソリューションと自らうたう製品は、クラウドパッケージ「Office 365」、最新OS「Windows 10」、さらにはモビリティとセキュリティの管理サービスがセットされている。大企業向けと、中堅中小企業向けがある。
日本マイクロソフト業務執行役員 Microsoft 365ビジネス本部長の三上智子氏は言う。
「製品の名前に、Microsoftが入っているところに、大きな意味があります。サティア(サティア・ナデラCEO)改革の前までは各製品ディビジョンでそれぞれが開発を行い、製品をリリースしていました。サティアが変えようとしたのが、そうしたサイロ型の組織であり、横で連携するクロスコラボレーションでした。この製品はマイクロソフトとして世界のみなさまの働き方を変えていきたいという思いに加えて、組織の枠を超えたOne Microsoftで作り上げたパッケージという意味合いが込められているんです」
実際、製品開発の現場では、それまでになかったコラボレーションが繰り広げられたという。会社を挙げてクロスグループコラボレーションで、顧客のソリューションを提供しようと取り組みを進めたのが、この「Microsoft 365」なのである。前出の三上氏が続ける。
「マイクロソフトといえば、多くの方が想像されるのが、WindowsやWord、Excel、PowerPointです。これらはすでに中身を説明する必要はありませんが、Microsoft 365も中身をわざわざ説明しなくてもいいようにしたい、という戦略的な意味を込めたソリューションになっています」
日本ではすでに、日経平均銘柄の8割以上がマイクロソフトのクラウドのユーザーになっている。ここに集まるビッグデータもまた、日本におけるMicrosoft 365のベースになる。Microsoft 365ビジネス本部シニアプロダクトマネージャーの輪島文氏は言う。
「日本マイクロソフトはOffice 365を通じて、働き方改革、働き方を支援するソリューションをずっと提供し続けてきました。今回、Microsoft 365は何が違うのかというと、キーワードが「活躍」になります。従来の働き方支援は、業務の効率化や、いつでもどこでも働けるテレワークの環境整備が中心でしたが、これから私たちが目指しているのは、マイナスをゼロに持っていくことではなく、プラスを生み出していくことです。根本的に働き方を変えていき、活躍できるための働き方をご支援したいと考えています」