求められているのは単に残業をなくすことではない
なるほど、クラウドサービスもここまで来たのか、というマイクロソフトのクラウドならではの目玉ソリューションが、Microsoft 365にはある。
それが、自分の働き方を分析し、改善提案をしてくれる「MyAnalytics/マイアナリティクス」という機能だ。
先にも少し触れたように、マイクロソフトのクラウドは大企業の多くが導入している。Microsoft 365は、この状況をフルに活用する。本部長の三上氏は言う。
「Office 365はたくさん使っていただいている商品ですから、企業の中で使っているデータはすでにクラウド化されていて、集積されているんですね。例えば、メールの数にしても4兆件だったり、会議の数だと月に8億回だったり。そうした膨大なビッグデータがすでにクラウド上にあるわけです」
この膨大なビッグデータを、働き方の改革に活用しない手はないというわけである。輪島氏は言う。
「ひとつは時間の使い方です。日本では残業の削減が大きく取りざたされていますが、会社で残業をなくすという取り組みだけだと、仕事を残したまま家に戻ってしまう、家で仕事をしてしまう、というようなことが起こり得ます。これでは、本当の意味での生産性の向上やビジネスの成長は難しいわけです」
今、求められているのは、単に残業をなくすことではなく、限られた時間の中でいかに成果を出していくかということだからだ。
「そのためには、どんなことに時間をかけているのかを見える化して、無駄なことにかけている時間をなくすことに意味が出てきます。その時間を、付加価値の高い時間に変えていくことが必要なんです」
かといって、どんなことにどのくらいの時間を使ったか、一人ひとりがインプットしなければいけないなどということになれば、むしろ仕事を増やしてしまう。Microsoft 365では、そんなことは必要ない。
輪島氏が実際に4ヵ月にわたって社内でテスト運用をしていたという画面を見せてもらった。会議時間、メール時間、フォーカス時間、残業時間が棒グラフで表されている。
「何か特別にインプットしたということはありません。メールをしたり、スケジュールを入れたりして普通に仕事をしているだけで、1週間、何にどれくらいかけていたか、というデータが可視化されるんです」
パソコンにどれくらい触れていたか、スケジューラーとも組み合わせて算出される。一人で集中して仕事をするフォーカス時間は、スケジュール上に個人の作業時間を入れるようになっている。
「我々は、いつでもどこでも仕事をしていくのが基本ですので、なるべくスケジュールはオープンにして共有することが前提になっています。スケジュールに、作業も含めて時間を入れているんです」
残業時間中にメールを送ったりすると、残業していることになる。輪島氏によれば、かなりリアルに近い印象だったという。
しかも、これが毎日ストックされ「時間の使い方の傾向」が折れ線グラフで見られたりする。メールにこんなに時間がかかっているのかなど、何にどのくらい時間を使っているか、自分でわかるのだ。
また、会議に関しては「会議の傾向」も出る。長時間の会議、定期的な会議、残業時間の会議のほか、面白いデータが出てくる。
「会議の最中に何か別の作業をしている、例えばメールを打っている、なんてデータも出てくるんです。他の仕事をしているくらいなら、会議をやめるか、自分を半分にしたほうがいいということがわかるわけですね。あと、競合の会議などというものもあって、これは部下が管理職に会議の出席をお願いされたとき、どのくらい重なったかというものです。こうした状況を、メンバーや上司と共有して働き方の改善につなげていけるのです」