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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

赤字家電3社が新社長に
内部昇格者を選んだのは
ガバナンスの大失敗

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第56回】 2012年4月26日
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 日本企業の人事をFavoritism(ひいき主義)と呼び、サムスンのような人事をMeritocracy(実績評価主義)と呼ぶ。仕事の実績で従業員を評価するからだ。サムスンの成功は日本の人事制度の裏返しでもあるのだ。

 そして結果が出た。サムスンは勝ち続け、日本企業は赤字に転落した。それでも日本企業は、社内ポリティクスで勝ち残った人を社長に据え、自分は会長に就任する。なぜ会長になるのか?後任の社長が自分を批判することを恐れるからだ。これでは後任社長が変革を行いたくてもできない。変革をすることは前社長を悪者にすることになるからだ。

 投資家は今回の社長交代劇をみて「売り」に走った。新社長の方針演説を聞いて株価はさらに下げた。具体的な戦略はなく「頑張ろう」以外には何もなかったからだ。

 自分が「社長の器」でないときには就任を辞退すればよい。自分の非力で会社を落ち目にした前社長は潔く引退すればよい。企業は「公の器」である。決して私物化してはならない。

 サムスンにしてみると、ソニーもパナソニックもシャープも、もはや競争相手ではない。サムスンがマークしているのはアップルだけである。サムスンとアップルはいまスマートフォンの特許を巡って全世界ベースの訴訟で戦っている。「スマホ後進国」で「ガラパゴス王国」である日本への興味は日に日に薄れてこよう。

 日本からの技術者のスカウトは今後減り、代わってアップル社の不満分子の引っこ抜きに必死になるかもしれない。日本企業はサムスンが引っこ抜きに来てくれた日々を懐かしむ事になろう。

 今回社長に就任された方々に言おう。「社長就任おめでとうございます。でも早期に引退されて、サムスンのNo.2をスカウトして席を譲っては如何でしょうか」と。


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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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