日本にはない「現金給付」も導入
家族介護の担い手を「労働者」と見なす

 もうひとつ、日本と大きく異なるのは、家族介護者向けの「現金給付」が大きな役割を果たしていること。

 日本では家族への現金給付で大議論があった。「家族が互いに助け合うのは日本の伝統であり美風」と言う推進派に対し、「嫁や娘、妻たちが介護を強いられてしまう」とする反対論が鋭く対立した。「介護の社会化」を掲げた介護保険の原則論が通り、現金給付は消えた。

 ところが、ドイツでは当初から重視されている。何しろ在宅介護の過半がこの「現金給付」だ。「施設入居より在宅重視」とする基本施策は日本と同じだが、現物給付の半額以下の安い家族介護で総費用の圧縮を図っている。現物給付とは、訪問介護や通所介護(デイサービス)などの在宅サービスである。

 実は、家族介護の担い手を「労働者」と見なしているところが肝心である。介護者の介護時間が週14時間以上あり、かつ、30時間以上は社会で働くことはできない状態であることが条件となっている。

 労働者であるから、年金や労災保険、失業保険に加入できる。2年間の介護休暇を取得して、その後に元の職場に復帰する。

 現金給付は要介護者の口座に振り込まれる。つまり要介護者が「雇用主」となり、子どもや親族、近隣者、あるいはファミリーヘルパーなどに介護費として渡す。このファミリーヘルパーは、散歩や掃除、洗濯などの生活支援を行う職業として定着している。諸団体が講習会を開いて資格を与えるが、国家資格ではない。

 このほかに、ポーランド人を中心にした東欧やトルコなどからの移民を含めた外国人ヘルパー(家政婦)が大勢いる。その数は、40万人に達するとも言われる。低賃金労働者が多く、斡旋業者が介在する「闇労働」とも指摘されている。2011年からEU域内では労働者の移動が自由になったことが拍車をかけている。

 24時間の継続した介護が必要な場合に外国人ヘルパーを住み込みで頼むと、現金給付の対象となるが、給付額が少なく大部分は持ち出しにならざるを得ない。

 介護者がきちんと介護を受けているかのチェックが為されることもあり、今のところ現金給付制度への批判はほとんど聞かれない。

 現金給付を設けた最大の理由は、できるだけ在宅介護を続けて、費用が高い施設入居を思いとどまらせたい政策判断がある。当初は、確かに現金給付の比率が高かったが、最近では大都市部を中心に独居者が急増しており、現物給付の比重が増えつつある。

 現金給付と現物給付を組み合わせた「コンビネーション」と言われる使い方も広がっている。

(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)