エルドアン大統領が「金利は搾取の道具」と考えて中央銀行を支配し、利上げを認めないことが、経済危機をより深刻にしている。利上げという通貨防衛の鉄則を無視しているのだ。トルコの中央銀行は独立性を担保されておらず、政策金利を上げることができない。なんとか市場金利の利上げ誘導でしのごうとしているが、その限界は明らかだ。

 さらに、エルドアン大統領が「政治主権の放棄になる」と主張し、国際通貨基金(IMF)の支援を頑なに拒否している。支援の見返りに厳しい財政緊縮を要求されるのを嫌がっているのだろうが、その代わりに、サウジアラビアとの断交で孤立しているカタールと直接投資などで関係を深め、通貨スワップ協定を結んだりしている。

 結局、エルドアン大統領のいかにも付け焼刃的に見える対応によって、リラ売りは加速してしまっている。そして、その影響は世界に波及し始めている。新興国からの資金流出が加速し、アルゼンチン、インドネシアなどが利上げを実施した。

 しかし、トランプ大統領はツイッターで「われわれのトルコとの関係は、現在は良くない!」と発言し、経済制裁に加えて、F15のトルコへの売却の当面禁止を発表し、さらに追加の経済制裁の可能性も示唆した。

 これに対して、トルコは報復関税を導入するなど対抗措置を強化し、報復合戦が加速している。トルコはNATO加盟国だが、ロシアと接近を図るなど、安全保障上の問題に発展する懸念も広がっている。

米国が第二次大戦後の同盟体制を
築く以前を振り返ってみる

 このように、米国が「世界の警察官」をやめて、気に入らない国を「モグラ叩き」してしまう時代にどう行動すべきかを考えたい。それには、米国が「世界の警察官」になる前のことを振り返ってみることだ。

 この連載では、ピーター・ゼイハンがまとめた、「多くの国が米国の同盟国になることで得たメリット」を紹介したことがある(第170回)。これを裏返して、「米国の同盟国になる前」がどういう状況だったか整理してみよう。

(1)フランスとドイツは、お互いに相手を警戒して武装し、何度も戦っていた。

(2)スウェーデンやオランダなどの中規模の国家は、防衛に最大限の努力を割かねばならず、貿易に焦点をあてて自国の強みを活かすことなどに集中できなかった。