この判決には、実は大きな教訓が3つ含まれている。1つは今回のスマホ運転の罪状が一般的な交通事故に適用される「過失致死罪」ではなく、より重い「重過失致死罪」だった点、もう1つはもし家族が損害保険に入っておらず遺族に賠償できなかったら実刑だった可能性がある点、もう1つは被告が大学の退学に追い込まれた点だ。

 それぞれ平たく言うと、スマホ運転は刑事上で一般的な車の死亡事故などより悪質とみなされ重い罪に問われること。今回は家族に助けられたが1つ間違えば囚人服を着ていた可能性があったこと。そして最近まで青春を謳歌していた女子大生が一転して「前科1犯、無職」になり、事件当時に成人していたため実名報道され、望んでいたような就職もほぼ見込めないという、極めて厳しい現実だ。

無灯火なら、より厳しい処分の可能性

 一方、男子大学生(19)のケースはどうか。

 茨城県警が8月2日付で水戸地検土浦支部に書類送検した容疑は元女子大生と同じ「重過失致死罪」。送検容疑は6月25日午後8時45分ごろ、つくば市の道路でマウンテンバイクを運転中、団体職員の男性(当時62)を正面からはね、頭部強打により翌日死亡させたとされる。男子大学生は送検後、未成年であることなどから、水戸家裁土浦支部に送致された。

 調書や弁解録取などによると、男子大学生は事故当時、マウンテンバイクを運転しながらスマホを操作していた上、無灯火だったとされるが、警察発表によると「そもそもバイクにライトが取り付けられていなかった」という。

 男子大学生は事故当時、両耳にイヤホンを着け、時間を確認しようとスマホを操作しており、前方にいた男性に気付かなかったと供述している。実際に事故後、男性宅を訪れて妻(62)に謝罪し、スマートフォンを見ながら運転していたと正直に説明したという。

 ここで問題になるのは、刑事でも、民事の賠償能力に応じて処分が変わってくる点だ。被害者の男性は松田長生さんで、農業と食品産業の研究開発「国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構」(農研機構)果樹研究所の所長を務めていた。

 生命に「軽い」「重い」がないこと、生命に価格をつけられないのは当たり前だが、司法的には「遺失利益」という概念が存在し、事故で死亡しなければ「その後の生涯でいくらの資産を残せたか」が具現化される。

 前述の元女子大生は民事的な賠償が可能だから執行猶予になったが、この男子大学生はどうか。未成年による事件であるため情報が限定的だが、条件が揃わなければ元女子大生より重い判決になる可能性さえあるのだ。

 そして、無灯火(しかもライト無装着)は情状として厳しい。元女子大生の判決との整合性を考えると、公判請求された場合、罪を軽くするため弁護人にはある程度の説得力がある「ひねりを入れた論旨」が必要になる。