欧米では、
ワインが外交に大きな影響を及ぼす

「Koizumiは歓迎されてないよ。なぜマヤを出さないんだ」

「マヤ」とは、日本人女性がオーナーを務める、ダラ・ヴァレ・ヴィンヤーズというワイナリーでつくられるワインです。マヤは最上ぶどうからつくられる高品質のワインであり、ダラ・ヴァレ・ヴィンヤーズの看板ワインとして扱われる特別な1本です。オークションでも人気であり、ワイン評論家のロバート・パーカー氏が100点満点を与えたトップクラスのワインでもあります。

 もちろんその価格は高額なため、晩餐会用のワインとしては予算オーバーだったのかもしれません。しかし、フランスのサルコジ元大統領の晩餐会では、それに匹敵するほどのワイン「ドミナス」がサーブされました。ドミナスはフランスを代表する最高級ワインシャトー、ペトリュスのオーナーがカリフォルニア・ナパでつくる高級ワインです。このような事情もあり、「良好な日米関係をアピールするなら、クロ・ペガスだけでなく、ダラ・ヴァレ・ヴィンヤーズからもワインを選ぶべきだった」と物議を醸したのです。

 2014年に訪米したフランスのオランド前大統領の公式晩餐会でも、ワインが大きな議論を呼びました。この晩餐会では、当時はまだ無名だった、ヴァージニア州のスパークリングワインがサーブされました。そして、無名のワインが出されたことを知ったフランス国民が、アメリカに大きなブーイングを浴びせたのです。

 その頃、オランド前大統領は有名女優との不倫でゴシップ記事を賑わし、夫人を伴わず単独で公式晩餐会に出席していました。しかし、そうしたゴシップ以上にフランス国民たちはワインに興味を示したのです。フランス国民のワインに対する関心の高さにはとても驚かされました。