五輪向けのインフラ投資が元凶で
不況に喘ぐブラジル国民

「おいおい、博物館に予算がつけられないほど財政難の国と、世界が憧れる経済大国ニッポンでは全く事情が違うだろ」というお叱りが飛んできそうだ。確かに、ブラジルで起きたことが、そのまんま日本で起きるとは考えにくい。だが、我々日本もブラジルのように、何かしらの大切なものを失う恐れがある、ということが申し上げたいのだ。

 いったいどういうことかを分かっていただくには、まず、なぜそこまでブラジルの人たちが「五輪」を目の敵にしているのかを知っていただく必要がある。

 日本人のほとんどは「五輪」と聞くと、スポーツ振興、インバウンド、震災復興、日本人の心が一つになる機会――などなど、ありとあらゆる良いことの「起爆剤」になるハッピーなものという印象を抱いているが、前回の開催地の人たちからすれば、「不況の起爆剤」というイメージの方が強い。

「五輪に向けた多額のインフラ投資により、基礎的財政収支は12年から赤字に転落。長期負債は16年時点で1080億レアル(約3.5兆円)に達した」(日本経済新聞2018年2月19日)

 州財政をここまで悪化させて建設したのが、競技場やオリンピックパークという「五輪インフラ」。五輪から2年が経った今、熱狂に沸いたサッカースタジアムは廃墟化し、メイン会場のオリンピックパークも閑散としている。膨大な維持費を食う「負の遺産」になってしまったのだ。

 “金食い虫”を抱えて財政難に苦しむとなれば、「本当に社会に必要なインフラ」の投資が削られるのは時間の問題だ。ブラジルでは、博物館付近の消火栓はもちろん、「治安」に対する投資まで削られてしまっている。

 警察官への給料遅配が常態化して、パトカーや警察備品にも金が回らなくなったことで、治安が急速に悪化。殺人件数は2012年まで減少していたが、五輪インフラへの投資が始まった以降、再び悪化に転じている。こうなれば、消費も冷え込むし、企業業績も悪化する。完全に負のスパイラルに陥ってしまったところにトドメを刺したのが、今回の国立博物館の火災だったのだ。