罵詈雑言が響く勉強会
いたたまれなくなったが…

 実は、これにとてもよく似た状況に出くわしたことがある。某中堅出版社の編集長に直接、出版企画を検討してもらう勉強会に、興味を持って参加した時のことだ。私以外はすでに何度か参加している人たちで、当日も各々の企画を持ち寄って参加していた。

 参加者が一人ずつ、自分の企画の説明をし、編集長が助言をするという手順で進行していったのだが、私はすぐにいたたまれない気持ちになった。「こんな企画が通ると思うか!」「いったい、これで何が言いたいのだ!」「全くわからない!」「だ・か・ら・何なのだ!」「売れると思うのか!」――編集長の、私に言わせれば罵詈雑言が会場内に響きわたり、それがやまないのだ。

 私は、自分が言われていたのではないものの、他の人に対して、普通のビジネスシーンではあり得ない表現が横行する事態に、「そんな暴言はやめてくれ!!」と叫びたくなる衝動を抑えていた。「そんな言い方は、ないのではないでしょうか」「穏当な表現ではございませんね」と言おうかと逡巡しつつ、しかし、初回参加でまだ状況を全て把握できているわけでもないので、もう少し様子を見ようか、などと思いつつ、逡巡しているうちに、終了時間を迎えた。

 しかし、その後、日数を経るごとに、私にとっては異常と思える雰囲気が思い出され、そのまま放置しておいてよいものかという思いがこみ上げてきた。後日、他の参加者数人と会う機会があったので、参加した際の私の気持ちを伝えた。

「私もとんでもない会議だと感じた」「なんとかしなければならない」という反応があるだろうと思っていたのだが、他の参加者は、「あなたがなぜ、そのようなことを言うのか全くわからない」「自ら望んでその会議に参加している」「編集長が直々に歯に衣着せぬ指導をしてくれる、得難い機会だ」「おかげで本を出すことができ、ビジネスも成功し、編集長は恩人だ」というように、私とは真逆の反応を示した。

 思い起こせば、会議の最中、編集長に何を言われようと、他の参加者の目は輝いていたように見えたし、意欲にあふれた振る舞いをしていたように思う。他の参加者にとっては、編集長の発言は、パワハラでもなんでもない親身な指導で、初対面の私だけがパワハラだと思っていた事例だ。