-------家電メーカーの事例-------

家電メーカーのサポートセンターに、年配の男性から電話が入った。

「エアコンを購入したが、きちんと動かないんだよ。何度も電話したが、ちっともつながらないし」

オペレーターは、応答マニュアルに沿ってきちんと受け答えしたつもりだった。しかし突然、男性が怒り出した。

「言っていることがよくわからない。結局、どうすればいいんだよ!」

オペレーターは焦って、思わずこう口走ってしまった。

ですから、取扱説明書の最後に記載してある専用の窓口にお問い合わせいただければ、詳しくご説明いたします」

男性は「ですから」の一言でカチンときたうえ、たらい回しにされて頭に血が上った。

「もういい、本社の広報室に電話する!」と言い残し、電話は切られた。

(了)

こうした2次クレームの発生も、担当者が焦らず落ち着いて対応することで、その大部分は回避できます。

最初の「30分」は
この戦略で乗り切る

「謝って済む問題」にならなかったクレームを解決するためには、その「原因」を明らかにする必要があります。

細かいノウハウの詳細は『クレーム対応「完全撃退」マニュアル』でご覧いただきたいのですが、基本的には「事実関係の確認」と「相手からの聞き取り」の両面からサインを読み取り、真相に迫ります。

しかし、クレームの実態を見極めるのは容易ではありません。クレーマーの目的や動機は、千差万別です。場合によっては、その日の気分や体調が影響していることもあります。「納得がいかない」と、自分の要求を押し通そうとする人の本音を聞き出すのは、至難の業です。

大切なのは、クレーマーの目的や動機、あるいは本性を見極めようとして、いたずらに時間を浪費しないことです。

そこで、クレームの実態把握のプロセスに「時間軸」を取り入れてください。しばしば、「訪問先(クレーマーの自宅など)でなかなか帰してもらえない」という嘆きを担当者から聞きますが、それはクレーマーのペースに乗せられてしまっているからです。

私の経験則では、長くとも30分あれば、クレームの実態はおおよそ把握することができるはずです。「見極める」ことができなくても、「見当をつける」ことはできます。その過程で、落としどころが見えてくることが多いものです。

たとえば、「クレームの現場対応は30分間」と決めたら、その時間内で相手の話を聞き終えるように心がけます。いつも「答え」が見つかるとは限りませんが、クレーマーの態度や言動に振り回され、いつまで経っても「出口」が見えない状態からは抜け出せます。事例のように「でも」「だって」「ですから」のような「D言葉」を使ってクレームを長期化させてしまう事態も、回避できます。

要するに、「時間のボーダーライン」を定めて、そこに達したかどうかを見極めることのほうが重要なのです。そして、そのひとつの目安が「30分」。クレーマーと対峙してから30分経ったら、「やりきった感」をもってもいいのです。

30分経っても過剰な要求を突きつけてくるクレーマーに対しては、私が「ギブアップトーク」や「積極的放置」と名付けているオリジナルの撃退法があります。次回以降の連載記事で、詳しく紹介します。

※参考記事
目的は「論破すること」。
高齢化で急増する“シルバーモンスター”の脅威
https://diamond.jp/articles/-/178787