企業の防災対策あなたの会社の防災対策、万全でしょうか? Photo:PIXTA

西日本に大きな被害をもたらした台風21号や北海道胆振東部地震は、関西空港の機能不全や北海道全域でのブラックアウトなど、想定外の事態を引き起こした。今後も台風や大地震などを含む大規模な災害の発生も予見されるなか、企業はどのように防災対策を行うべきか。防災・危機管理アドバイザーである防災システム研究所・山村武彦所長に、現在の企業における防災対策の問題点と適切な対応策について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 林 恭子)

災害は全て違うものなのに、
一辺倒の対策をしていないか

――台風21号や北海道胆振東部地震が発生するなど、災害が相次いでいます。

防災システム研究所山村武彦所長山村武彦(やまむら・たけひこ)/防災システム研究所所長。 1943年生まれ。東京都出身。新潟地震(1964年)を契機に防災・危機管理アドバイザーを志し、世界約250ヵ所の災害調査を実施。その教訓を伝える防災講演は2000回を超える。自治体や企業の防災アドバイザーを務めるなど実践的防災・危機管理対策の第一人者。

 台風21号は最大瞬間風速が50メートルを超える場所もあるかなり風の強い台風で、大阪を含む都市部を襲いました。普通の台風であれば、日本に上陸する頃には勢いが衰えるにもかかわらず、台風21号は勢力を保ったままで、しかも2度にわたって上陸したのが特徴です。

 強風の影響で関西国際空港の連絡橋にタンカーが衝突しましたが、あの周辺にかなりの隻数の船があったため、ほかの船が衝突していた可能性も十分考えられます。そこで露呈したのは、想定の甘さです。暴風と高潮に備えるという発想がなかったのでしょう。

 また、都市部では強風が吹いたことで多くの建物が損壊したり、海近くに停車してあった車が高潮によって自然発火したりする被害も起きました。今回の件を受け、海岸線にある工場や施設は今後、高潮対策が必要だという認識になったはずです。

 災害は、全て同じではありません。例えば、台風でも風台風があれば、雨台風があり、雨や風が強くなくても遠くの前線を刺激して豪雨をもたらすものなど全て違う顔を持っています。つまり、一口で台風対策と言っても、高潮対策、強風対策、大雨対策、洪水対策、土砂災害対策など多岐にわたっています。

 ですから、1つのパターンを決めつけて台風対策や地震対策をすると、対応を誤ります。しかし、結果事象には共通項があります。その結果事象を考えて対策をすべきです。共通する結果事象の1つが、先日の北海道胆振東部地震でも起きた「大規模停電」です。