消防用設備の場合、メンテナンスは法律で年に1回以上と決まっており、外観点検と機能点検を行います。しかし、多くの企業で点検は業者に任せきりになっています。もちろん資格のある人に任せるのは当然ですが、メンテナンス料を競争させ、安い業者を優先し、結果として正しい点検が行われていないケースも少なくありません。
通達では、点検の際は一定の負荷をかけ、一定時間運転しなければならず、さらに自動切り替えができるかどうかをチェックし、できれば長時間運転を行うことになっています。しかし実際には負荷もかけずに、ディーゼルエンジンを始動させるだけで終わらせてしまう点検が多く、実際に災害時に動かしてみたら止まるという事態を引き起こしています。せっかく自家発電設備があっても、維持点検が適切でなければ、何も役に立ちません。
もう1つ問題だったのは、電気の質です。照明器具やヒーターなどに使用する分には問題ありませんが、電子機器の場合には電圧の波形が不規則だと機器に問題を起こす可能性があります。実際、発電機からパソコンの電源を取ったら動かなくなったという例もあり、電圧の波形についても点検する必要があるのに、実際はチェックされていないケースもあるようです。
メンテナンスをしているから安心と思い込まず、時間や質の面も含めて問題なく電気を供給できるかどうか自社で点検・維持管理すべきでしょう。
「通勤時間」の地震発生を想定しているか
“バックアップオフィス”の用意も
――自家発電のほかに、企業はどのような準備をすべきでしょうか。
自家発電も含め、オフィスなどの場所、人、物資のバックアップを考えることが大切です。では実際、皆さんの会社ではバックアップオフィスを準備できているでしょうか。
大阪北部地震は、M6.1とエネルギーは小さく、最大震度6弱でそれほど大きな揺れはありませんでした。しかし、たまたま午前8時前の通勤途上時間の地震だったため、帰宅困難者が約270万人も出ました。なかには、徒歩で長い距離を帰宅した人もいます。
なぜそんなことになったのか。企業にヒアリングをすると、社員がどこにいるかわからない、安否確認のシステムが入っているけれど、それにアクセスできなかったという回答が多数あり、社員と連絡が取れなかったことがわかります。
企業の災害発生時間の想定は、いい加減なものばかりです。多くが「会社の操業中」か「夜間休日」の2つくらいしか考えていません。つまり、「通勤途上時間の災害発生」を想定していないのです。ですから、マニュアルがなく、会社に行くのか、自宅待機になるのか、それ以外に指示を仰ぐべきなのかわからず、多くの人が行動に困ったと考えられます。