自家発電が機能しないケースも多数
メンテナンスが形式的になっていないか

 北海道胆振東部地震の発生後、北海道全域でブラックアウト(巨大停電)が起きたのはご存じの通りです。ブラックアウトは、電力の需給バランスが急激に崩れて周波数が乱れると、タービンの故障やシステムの異常が起こりやすくなるため、それを避けるために電力の供給を自動的に遮断する仕組みとしてあるものです。しかし、理論上は起こりうると思っていても、実際は起きないだろうという認識が、対応を後手に回らせてしまったと考えられます。

 結果として、おおむね停電が解消したのは地震発生から2日後で、万一の場合には計画停電も考えられたため、自家発電の設備がない工場では操業を停止せざるをえないところもありました。

 ブラックアウトは災害が起これば起こりうることです。そのバックアップとして、皆さんの会社では自家発電設備が準備できているでしょうか。小さな照明などは点いても、実際には災害時の事業継続計画を実施できるほどの発電能力はなく、工場は操業停止に陥る企業が多いように思います。

 今回は発電所の一部トラブルだったので2日程度で済みましたが、もし南海トラフ地震や首都直下地震、あるいは高潮が発生すれば、火力発電所は湾岸沿いに数多くあるため、長期化する可能性もあります。そうなれば、今回の10倍以上の人たちが影響を受けることになるでしょう。ですから、そうした想定をした備えが企業には必要です。

 東日本大震災の後、主要な企業500社にアンケート調査した結果、主要業務が停止して復旧できなかった要因(複数選択可)の第1位は「停電」でした。計画停電も含めて停電で約54.8%の企業が事業を再開できなかったようです。台風であろうと、地震であろうと、事業を継続していくうえで、停電対策は非常に重要な課題です。(内閣府「企業の事業継続の取組に関する実態調査」・平成23年11月)

――停電対策として、具体的にはどのようなことをすべきでしょうか?

 自家発電は防災対策の一環として、減税措置も用意されています。中には、推進している融資制度もありますので、調べて対策してほしいですね。

 一方で、現在、自家発電を持つ大手企業もありますが、日本内燃力発電設備協会が、2012年3月に一定面積以上の大規模施設に対して行ったアンケートによると、東日本大震災の発生時に自家発電があったけれど動かなかった、途中で止まった企業が全体の48%にも上りました。その理由は、“形式的なメンテナンス”しかしていなかったからです。