上院が自らこのような選択をしたことで相互抑制の手段の一角が崩れたという見方は多く、与党・共和党のマケイン氏も「私たちはいつか後悔する」と語ったと、ワシントン発の記事は伝えている。

選挙を意識し議員の依存強まる
「異次元の統治」に危機感

 一方でホワイトハウスの権限も事実上、少しずつ強化されてきた。

 最近はどの大統領も議会の議決を経ない「大統領行政命令(Executive Order)」を乱発する傾向にある。それは共和、民主を問わない。もちろんこの行為に批判は強いのだが、議会が動かないことに業を煮やした大統領側の措置として各政権は正当化している。

 宣戦布告をはじめ、通商交渉や徴税などなど、米国憲法上でさまざまな権限を有する議会が、それを執行するはずのホワイトハウスへの依存度合いを強めれば、米国が伝統としてきた統治の形態は大きく変質する。

 それなのに、米議会内にはトランプ支持の共和党議員が多い。そうしないと今秋の中間選挙をはじめ、選挙で勝てないという見方が多いからだ。

 共和党支持者層の中でトランプ大統領の支持率は、どの調査を見ても8割前後に上る。トランプ批判の穏健派や良識派は党内できわめて分が悪い。

 今のところ、「所与の権限を越えようとする者を抑制する政治体制がある」と言ったマケイン氏の予想は当たっていない。阿川教授に明かされたスカリア判事の発想も、「憲法にそう書いてある」というリッチー氏の指摘も、外れつつある。

 三権がそれぞれにチェックしあえば暴走は防げるという「憲法の制定者たち」の考えが覆される時、米国は本当に“imperial presidency”の国になる。

 米紙で“presidency”という単語を見かける頻度が上がっているのは、トランプ政権の個々の政策に対してというよりも、「異形の大統領」による統治そのものが米国の統治を異次元にもっていってしまうことに対して、危機感を抱いているジャーナリストが多いからだろう。

(時事通信解説委員 軽部謙介)