ファクターモデルなどを駆使し、このような下位20%にあたる銘柄を排除したインデックスに投資する運用を「エンハンスト・インデックス」などと呼んだりするが、その手間となる購入手数料や信託報酬なども同様にコストとみなすと、本当にパッシブ運用が最適解なのか、というところに行き着く。

 CAPMやファクターモデルといったベーシックな指標の理解なくして、インデックス型ファンドを選択する個人投資家は少なくない。たまたま目にしたブログなどの情報が、すべてを網羅したものと考えてしまうと、足元をすくわれる。

 当然ながら、インターネット上の情報は手に入りやすい分、読み手は情報を精査する必要がある。どこかの個人投資家が、個別にうまくいった手法を読んだだけで投資を学んだ気になるのは危険だ。最低限の経済学、ファイナンス論、投資戦略の書籍は読んで理解することが賢明だ。何事も原点回帰は大事であり、その時に一助となるのは往年の名著であることは疑いようがない。

投資の果実はお金だけではない

 さて、最後に問いかけたいのは、投資の果実はお金だけなのだろうか、ということだ。冒頭、筆者が挙げた違和感の2点目である「最初に投資対象とする投資信託を決めたら、積立投資の設定をし、相場もニュースも見ない」という点だ。

 仕事や家事、趣味の時間が優先されるが、資産運用もしなくてはいけないと思い、なんとなくインデックス型ファンドの積み立て投資をしているという個人投資家は素晴らしいと思う。しかし、ある程度投資というものに興味を持ち、それなりに時間を割こうと思っているのであれば、自動積立といういわば「思考停止」の投資スタイルではなく、もう少し手間をかけてよりよいリターンを求めてもよいのではないだろうか。

 何もリスクの高いことをせよと言っているのではない。たとえば、コア・サテライト運用のように、投資に回す資産の8割はインデックス型ファンドの積み立て運用のままでいいが、残りの2割はインデックスに勝つべく、個別銘柄やテーマ型投信に投資をしてみてはいかがだろうか。

 筆者は投資の果実はお金だけだとは考えていない。市場を上回るリターンを出すべく、本を読んで勉強し、市場を観察し、個別企業の財務分析や業界・産業情報を足を使って稼ぎ、時には各国の経済指標から世界経済の動向を予測する。このような日々の努力によって、マーケット脳は育てられていく。

 リーマンショックから10年が経ち、日本株式市場は右肩上がりを続けてきた。この数年で相場の世界に入ってきた投資家達は下落相場を知らないだろう。そうした観点からも歴史を学ぶことは重要だ。下落が続く相場においては、積立投資も累積リターンを削っていくだけである。その場合は一部益出しをしたり、キャッシュポジションを多めにとるなどの対策が必要になることも知っておくべきだろう。

 もちろん、これらの努力をしたところで、必ず投資がうまくいくわけではない。ただし、それは投資の果実がお金だけである場合の話。努力によって身に付いた知識や洞察力は必ず実生活でも役に立つし、人生の質も高めてくれる。せっかく相場の世界に足を踏み入れるのであれば、思考を止めずにお金以上の投資の果実を手に入れることも視野に入れてみてはいかがだろう。そうすることでお金を深く知り、結果として数字もついてくるようになるだろう。