どういう業界なのか、なぜその業界を志望するのかということも重要だが、業界に多数の企業がある中で、なぜその企業を志望するのかという理由を理路整然と説明するのは至難の業だ。

企業にとっても学生にとっても
手間がかかるだけでいいことなし

 面接や筆記試験も、もちろん大変である。だが、本当に学生を一番苦しめているのは「お祈りメール」。「当社はあなたのご希望に添えませんでしたが、あなたのご活躍をお祈り申し上げます」という不採用通知のことだ。

 学生が多数の企業を受けるようになれば、当然ながら倍率が高くなるので、受け取るお祈りメールの数も増える。心が折れそうになることも多くなるはずだ。落ちても落ちても落ち込まず、受け続けなければいけないのは、精神力のいる作業だ。

 客観的に言えば、それを乗り越えることで人間として一段成長できると思えばいい訓練の機会なのだが、本当に心が折れて「就職活動恐怖症」に陥ってしまう学生も少なくないので、頭の痛いところだ。

 余談だが、筆者は大学の就職支援責任者として、学生には「受かると思って受けるから、お祈りメールに失望するのだ。宝くじのようなものだから、50社受ければ1社くらい合格するだろうと思って受ければいい。そうすれば、10社や20社落ちても失望しなくて済むはずだ」と言っている。

 一方、企業側からすると、募集人数の何十倍かの学生が受けにくることになる。これは、企業にとっても極めて大きなコストだ。しかも、早めに内定を出せば、他社に引き抜かれる可能性が生じ、遅めに内定を出せば他社に優秀な学生を囲い込まれる可能性が生じる。つまり、内定を出した学生を囲い込むための手間もコストも必要となるのだ。

 このように考えていくと、手間がかかるだけで企業にとっても学生にとってもいいことはなさそうだ。