経団連の中西宏明会長が、現行の6月1日の採用面接の解禁、10月1日に内定という「経団連ルール」を、2020年度以降について廃止を示唆したことが大きな反響を呼んだ。これについて、単に、日本の大企業が自由な採用をしている外資系企業に優秀な人材を奪われないためとの解釈や、現行の就活ルール見直しという表現は、その本来の意図を矮小化している。
現行の横並びルールは、5月時点で4割の学生が内定を得るなど、解禁破り企業の続出で形骸化している。実効性を欠く現行ルールでも、それが目安として存在することで就活早期化への歯止めが利くといわれている。
しかし、現行の「採用選考に関する指針」という中途半端な規制は効率的でも公平でもなく、むしろ健全な競争を阻害する要因となっている。今後、新しい就活ルールについて、政府と企業・大学の利害関係者の間で話し合いがなされるようだが、そこから抜け落ちている肝心の学生の利害はどう反映されるのだろうか。
大企業の働き方・求める人材と不可分な新卒一括採用
企業が特定のポストに必要な人材を、必要な時期に採用するのが、欧米の職種別労働市場である。これと比べて、職種無限定を前提とした日本の正社員の働き方は、企業内の多様なポストを経験するために定期的な配置転換と不可分である。これと連動するのが採用人事であり、日本企業の働き方が変わらなければ、新卒一括採用も変えられない。雇用制度の改革はいずれにしても必要だが、新卒一括採用の是非と就活の時期を縛るルールの廃止とは、分けて考える必要がある。
現行の新卒一括採用には利点もある。若年者の高い失業率は欧米の深刻な問題である。この点で、大学や高校を卒業しただけの未熟練の若年者を好んで採用する日本企業の社会貢献度は大きい。また、卒業後の求職活動と異なり、在学中の就活は失業にならず、日本の失業率を引き下げる点で政府にも都合が良い。