「当時付き合っていた彼女がいたが、あのニュースは失恋と同程度にショックだった。しかも高校生だった自分にとって“結婚”は想像すらできない高いハードルのもので、その向こう側に彼女(安室奈美恵)が行ってしまったのだなと。もう自分の手が届く存在ではないことを思い知った」

 結局このことがきっかけでAさんは付き合っていた彼女と別れることになってしまった。「安室奈美恵を思うときほど真剣に(Aさんの)彼女に向き合っていないのではないか」と思い詰めたのであった。Aさんの彼女にしてみたら、とんだとばっちりである。

自らの結婚を機に卒業
別々の人生を歩んでいく決意

 結婚しようとも、伴侶でない最高の女性の思い出を胸に一人しまって生涯を過ごす男性は少なくない(らしい)が、Aさんはまさしくそれだった。安室奈美恵への思いを胸に秘め、いくつか恋愛をした。テレビで安室奈美恵を見かけるたびに「がんばっているな。おれもがんばらなくては」と寂しげな決意をするのだった。

 Aさんが21歳のとき、安室奈美恵が離婚を発表する。安室奈美恵本人の苦しい胸中を察しつつも「チャンスが巡ってきたのでは…?」という微かな希望の灯を脳内にともすが、バーテンダーや営業など職を転々としながらすでに社会人としておそらく安室奈美恵とは交わらないであろう進路を取り始めていたAさんは、彼女に近づこうとする具体的な行動を起こさなかった。代わりに彼は「最高の女性がまた最高の男性と出会えますように」と祈りをささげた。

 そしてAさんは30歳となり結婚した。相手は生粋のアムラーではなかったがそれを踏襲したファッションを好む人で、Aさんはおおむね満足だった。結婚式ではAさんたっての強い希望によって『CAN YOU CELEBRATE?』がかけられた。

「彼女の曲をかけることで、彼女に見守られながら祝福されている気分になりたかったというか。同時に、結婚式にこの曲をかけることが自分にとっての“彼女からの卒業”を意味するとも考えていた」

 すなわちAさんは30歳でようやく決別を決意し、実行したのであった。

>>(下)に続く

>>(下)を読む