シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。

「年収」ではなく「資産」が大事なワケPhoto: Adobe Stock

「年収」ではなく「資産」で見る

 1年前の話になるが、2024年12月のニュースで「三菱商事の年間賞与が1400万円か」というトピックスがSNS上でちょっとした話題になっていた。これは今までの日本企業では画期的な金額だ。

 ちなみにこの額は、テイラー・スウィフトの公演で、設備を運ぶトラック運転手のボーナスと同じ金額だ。

 すごいと言えばすごいが、アメリカでは話題にもならないだろう。

 そもそも年収についての情報など、シンガポールでもアメリカでもまったく話題にならない

 私は、友人の年収を想像したことも、また情報交換をしたこともない。なぜなら、日本の外は“純粋な資本主義”だからだ。だから、我々の間で「年収」が話題になることはない。

 年収は、新卒の人が最初の仕事を選ぶときの指標になるし、転職の基準にもなるが、それくらいだ。

 年収のようなデータは、日本の外では将来あてにならない。今後も継続して、それをもらい続けられるかわからないからだ。

 多分、今のところ日本の企業や社会のほうが圧倒的に安定しているので、年収とは「将来も約束された毎月の振り込み額やボーナスの合計」のような響きがある。

資本を蓄積して、それを活かして勝負するのが資本主義

 でも、これからは日本も海外と同じになってくるだろう。会社が買収されたり、倒産したりして、給料の約束が反故にされることは増えていく。

 日本の外の資本主義では、配当やキャピタルゲイン(売却益)を収入源にしている人が多い。

 特に、もともと年収が高かった人は、その収入を蓄積して資本として、資本を働かせて資産にしている。

 また、給料の一部を株でもらって、会社を成功させて、その株を何倍にもして、キャピタルゲインも配当も、たっぷりいただいている人もいる。

 資本を蓄積して、それを活かして勝負するのが資本主義だ。

 年収で考えている限り、それがいかに高くとも正直言って、「時間とお金を交換している雇われ労働者」のイメージしかない。

あなたを守ってくれるのは資産

 また、これから自分を守ってくれるのは、「資産」である。

 これからテクノロジーの加速度的進化や浸透でビジネス界は激変していく。

 会社が生き残れないということは、つまり、年収では生きていけないということだ。

 また、年収で生きている限り、自らを野に放って、生存本能を全開にして自ら稼いで生きていくというトレーニングは積めない。

 しかしながら、年収をくれる会社は激変を生き残ったとしても、どこかであなたを野に放つときが来る。従順に会社に奉公してきても、やがて間違いなく年老いたあなたは、野に投げ捨てられる。定年というやつだ。

 そこから、さらに続く人生を、自分で死ぬまで稼いでいかないといけないのだ。

年収にこだわっていては、未来はない

 資本主義の醍醐味、ゲームの本質は、家族旅行に行っていても、寝ていても、資本が稼いでくれる仕組みを築くことだ。

 いいサイクルに入れば、時間を切り売りしないでも、資本を何倍にもしてくれる。年収ではなく資本のゲームに入らないと、資本主義をフル活用していることにはならない。

 年収というフローもキャピタルを蓄積する大事な源泉だが、フローだけしか見ないで生きていると、いつかは食べられなくなってしまうかもしれないし、時間貧乏になってしまう可能性がある。

 日本人は頭のいい人も年収ゲームにどっぷりはまっていて、高給取りだが社畜化されている人がいてもったいない。早く資本のゲームに入らないと、AIが進化して、そこかしこに浸透しまくるこれからの時代は、高リスクとなるだろう。

(本稿は君はなぜ学ばないのか?の一部を抜粋・編集したものです)

田村耕太郎(たむら・こうたろう)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。