熊谷氏には、NECの命運を握る海外事業を束ね、新設したグローバルビジネスユニット(BU)のトップを任せる。
外部の民間企業出身者を副社長に充てるのも、BU長に据えるのもNECにとっては初の試みだ。
熊谷氏は文系の出身だがGEの元部下は、「自社の技術を知り抜いた上で決断し、一度判断したらぶれない頼りになるリーダーだ。NECでも支持されるだろう」と期待する。
他方で、事業部の権限が強く、組織の縦割りが残るNECは、「GE時代とは勝手が違うので、苦労する」との見方もあるが、熊谷氏の加入がNEC役員にとって刺激になるのは間違いない。
その熊谷氏のライバルと目されるのが、生え抜きの本命社長候補で4月に副社長に昇進した森田隆之氏だ。
NECによる40件ほどの事業の買収・売却を手掛けた実績があり、海外事業にも明るい。遠藤氏の後任社長人事の際に、50代のホープだった森田氏を待望する声があったほどの実力者だ。
森田氏は副社長としてM&Aを引き続き担当するとともに、6月にはCFOに就任する。経理畑出身者以外がCFOに就くのはNECでは初めてのことだ。
縮小続きだったNECを成長に転じさせるには、保守的になりがちな経理畑出身者ではなく、攻めの発想で財務を仕切る必要があるとの考えで抜てきされた。
これまで企業買収で“攻めの財務”をCFOに要求してきた森田氏が、今後はアクセル役とブレーキ役を兼ねる。つまり、森田氏は重責を負うことになる。
森田氏周辺によれば「本人は、グローバルBU長は自分だと思っていた節がある」というから、そこに割って入った熊谷氏への対抗意識は相当なものだろう。